HPVワクチンで子宮頸がんを予防しよう 医師らが啓発プロジェクト 国内で毎年3000人死亡

(2021年4月9日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる

漫画家の鈴ノ木ユウさんが描いた、クラウドファンディングを呼び掛けるイラスト

 子宮頸がんなどの原因となる「ヒトパピローマウイルス(HPV)」について知ってもらおうと、医師など専門家有志が、HPV感染症の啓発活動「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」に取り組んでいる。日本では20~40代を中心に毎年約1万人が子宮頸がんと診断され、約3000人が亡くなっている。きょう4月9日は「子宮頸がんを予防する日(子宮の日)」-。

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは

 女性特有の子宮頸がん、男性に多い中咽頭がんや肛門がんなどを引き起こすウイルス。200種類以上の型があり、国内ではこのうち2種または4種の型を予防する2価または4価ワクチンが定期接種の対象。2月に販売開始された9価ワクチンは定期接種の対象ではないが、予防率は4価ワクチンより20ポイント以上高い約88%とされる。英国、米国、オーストラリアなどでは男性も無料接種の対象。

英国などでは8割以上が接種 「極めて安全」で無料なのに、日本は0.6%

 「子宮頸がんの予防接種は無料で受けられるのに、対象者のほとんどが接種していない。医師としてどうしても見過ごせなかった」。みんパピ!代表理事の産婦人科医、稲葉可奈子さんは、活動への思いを語る。

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みんパピ!代表理事の稲葉可奈子さん=東京都内で

 HPVワクチンは2013年4月、小学6年生~高校1年生の女子を対象に、公費で受けられる定期接種が始まった。しかし、副作用の懸念から、国は同6月から、対象者に接種を促す「積極的勧奨」を中止。このワクチンが定期接種の対象であることに変わりはないが、積極的勧奨は今も再開されていない。

 稲葉さんは「薬害などの可能性を検証する必要があり、勧奨を中止したこと自体は間違いではなかった」とした上で、「その後、世界中でさまざまな研究が行われたが、ワクチンと重い神経症状との因果関係は証明されていない。世界保健機関(WHO)も『HPVワクチンは極めて安全』としている」と指摘する。

 WHOの調査では、2019年のHPVワクチン接種率はノルウェー、オーストラリア、英国、カナダなどで80%以上なのに対し、日本は0.6%。日本産科婦人科学会などは積極的勧奨の早期再開を要望している。

産婦人科医の稲葉さん「かかりつけ医の声掛けが効果的」 啓発サイト開設

 厚生労働省は、定期接種の対象者らにワクチンの有効性や安全性などに関する情報を提供するよう自治体に求めているが、「一人一人に知ってもらわなければ現状は変わらない」と稲葉さん。広く情報を発信するため、産婦人科や小児科、公衆衛生、行動科学などの専門家10人がつながり、昨夏から活動を開始。クラウドファンディングで約2600万円の支援を集め、啓発サイト「みんパピ!」を立ち上げた。

 「学会がエビデンス(科学的根拠)を伝えても、人の行動は変化しない。最も効果的なのは、信頼するかかりつけ医の声掛け」と考え、地域のかかりつけ医が保護者らにワクチンについて説明する時の助けとなるチラシを作成。これまでに依頼のあった全国の医療機関など約420カ所に約7万枚を配布した。

 啓発サイトからダウンロードできるパンフレットや動画、漫画なども制作。「ワクチンを接種した人も、子宮頸がん検診を受けることは大事」などの情報を発信している。

 「ワクチンについて知った上で接種しない選択肢も尊重されなければならない。まずは正確に知ってもらうことが大事」と稲葉さん。0~9歳の男女2人ずつ計4人の母でもある。「自分の子どもも一定年齢になったら、全員にHPVワクチンを勧める。不安のある保護者には寄り添っていきたい」

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