「隠れ教育費」とは? 文具に上履き…公立小で年平均6万円超 義務教育は”無償”なのに
色鉛筆、油粘土…まとめ買いが前提に
1月中旬、娘の小学校入学に当たり、名古屋市の女性(39)の元に学校から送られてきた学用品の申し込み案内。工作用のはさみにのり、色鉛筆、クレヨン、油粘土、油性マーカー、学習ノート3冊、道具箱で計3760円にもなった。
まとめて買うことが求められ、例えば「はさみは持っているからいらない」と言っても、難しいようだ。「この値段が妥当なのかも分からない」。体育用の半袖シャツ1650円、長袖シャツ1900円、ハーフパンツ2000円も必要とされ出費は大きかった。
公立中は13万9000円 さらに給食費
自治体や学校が指定するものは多岐にわたる。入学後に購入を求められる例も。文部科学省による2018年度の調査では、学用品や体育用品費などの学校教育費として保護者が負担した年間平均額は公立小の場合、約6万3000円、公立中は約13万9000円だった。これにそれぞれ、給食費が約4万3000円加算される。
「隠れ教育費」の共著がある千葉工業大准教授の福嶋尚子さん(40)は「学校教育にかかる総額がいくらになるかを、教員も保護者も把握していない例が多い」と指摘する。
負担を減らそう 海老名市の取り組み
そうした中、負担を減らそうと取り組む自治体も出てきている。神奈川県海老名市は2017年、市立小中学校の校長や保護者らで委員会を発足させ、1年間にわたり議論を重ねた。市教育委員会によると保護者に聞いたところ、小学校では5割、中学校は8割近くがジャージーなどの費用に負担を感じていた。また、制服や運動着、上履きなどの合計を中学校間で比較すると、最大約2万6900円の差があることも分かった。
議論の末、使用頻度が低い柔道着や彫刻刀は学校が無償で貸与することに。制服のポロシャツや運動用Tシャツも、基本的な仕様に沿っていれば自由とした。
ジャージで13社コンペ 2664円安く
加えて、長年同じメーカーに任せていた市内6中学校のジャージは、学校ごとにコンペを実施。2019年4月から新しくした海老名中の場合、13社が参加し、ハーフパンツとのセットで9000円と、それまでより2664円安くなった。市教委は「今後も年間を通してあまり使わない教材などを精査し、負担を軽くしたい」と話す。
福嶋さんは「本当に必要かどうか、他で代替できないか見直しが必要だ」と訴える。具体的には、多くの学校で一人一人に持たせている書写や絵の具セット、辞書などは学校に備え付けることを提案する。「すべての子どもが同じように学び、成長できる環境が保障されてほしい」
「無償」文科省の見解は授業料不徴収
福嶋さんによると、戦前の教育費は基本的に私費負担だったという。しかし、1946年に公布された憲法は第26条で「義務教育は、これを無償とする」と規定した。
その後、1947年制定の教育基本法と学校教育法は、義務教育については授業料を徴収しないと明記。1963年には、国が小中学校の教科書を無償で配布する制度が始まった。
「無償」とはどこまでを言うのか。文科省は、保護者が子どもに教育を受けさせるに当たり「その対価を徴収しないことを定めたもの」とし、授業料不徴収の意味とするのが通例という見解を示している。一方で2018年には、保護者が安価で良質な学用品を購入できるよう、学校の取り組みを促すことを全国の自治体などに通知した。
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