茨城県の中高一貫校が全国最多の13校に 志願者が増え受験も過熱 高校の入学定員減に疑問の声も
保坂千裕 (2022年4月8日付 東京新聞朝刊)
茨城県立水海道一高(常総市)と下妻一高(下妻市)の付属中が本年度、新たに開校し、県立中高一貫校の数は全国の都道府県で最多の13校となった。特色あるカリキュラムに加え、難関大学への進学実績が良いことから、志願する小学生は増え続けている。一方で、「内部進学枠」によって高校受験の定員が減ることを疑問視する声も上がる。
20年度から3年間で10校を開校
中高一貫の県立中学は、2008年度に並木中等教育学校(つくば市)、12年に高校併設型の日立一高付属中(日立市)、13年に古河中等教育学校(古河市)が開設。その後7年間は新規開校はなく、この3校は学校説明会に年間計2000人以上が参加するほど人気が沸騰。地域バランスを取りつつ、門戸を広げることが急務となっていた。
県教育委員会は専門のチームをつくり、20年度からの3年間で一挙に10校の開校にこぎつけた。当時のチームリーダーだった柳橋常喜・高校教育課長は「中学を併設したのは、人気がある学校ばかり。別の中学で学んだ生徒とも切磋琢磨(せっさたくま)してほしい」と期待。中高一貫教育の効果を検証する考えも示した。
高まる受験熱 中学受験生は前年の3割増
受験熱も高まっている。19年度入試で、3校は募集定員計360人に対し1125人が受験し、3.13倍の倍率だった。22年度は、13校で計920人の枠に2641人が挑戦。倍率は2.87倍と若干和らいだものの、県立高入試と比べると依然として狭き門だ。
県内で進学塾を展開する「茨進(いばしん)」の担当者も、近年の中学受験熱には驚きを隠さない。担当者は「茨城県は高校受験がメインだったが、この3年間は、前年の3割程度ずつ中学受験生が増えている」と話す。
高校受験の定員減り「保護者の不安爆発」
また、首都圏の私立中高一貫校にも通える県南や県西地域では、私立との併願を見据え、早い段階から塾通いを始める小学生も多いという。
ただ、中学を併設した高校ではその分、高校受験の定員が削られることになる。昨年12月の県議会定例会では田村佳子氏(公明党)が、土浦一高付属中(土浦市)の開設に伴い高校の定員が半数になった影響で周辺の県立高入試のレベルが上がっていると指摘、「保護者の不安が爆発している」と訴えた。