戦火逃れたウクライナの姉弟が千代田区の和泉小に「1年かけて日本語を話せるようになりたい」
井上靖史 (2022年4月20日付 東京新聞朝刊)
ロシアの侵攻を受けているウクライナから逃れてきたジブロフスカ・オリビアさん(11)とジブロフスキ・ヤン君(8つ)きょうだいが4月から、東京都千代田区立和泉小(同区神田和泉町)の6年生と3年生として学んでいる。言葉の壁はあるが、千代田区は通訳を配置するなどして支援する。姉は英語を、弟は図工をそれぞれ「頑張りたい」と意欲を見せている。
「学区内に子どもがいれば受け入れる」
「1年かけて日本語を話せるようになりたい」。6日の始業式。翻訳機に向かって話したヤン君の意気込みが大型モニターの画面に表示されると、「ワーっ」と児童たちから歓声がわいた。村田悦子校長は2人の新たな学びの順調な滑り出しに、ほおを緩ませた。
「近所も爆撃を受け、すごく怖かった」。母ズラベル・オルハさん(43)は暮らしていたキーウ(キエフ)の様子を振り返った。3月19日、夫と母を祖国に残し、知人を頼って20歳の長女も加えた4人で千代田区内に身を寄せた。
「公立なので学区内に子どもがいれば受け入れる。日本語を話せない子どもを受け入れることはこれまでもあった」。相談を受けた区教委の田中博主任指導主事は話す。
通訳などサポート態勢で言葉の壁を克服
もともと千代田区には、それぞれ週2回ずつだが日本語の苦手な子どもを対象に通訳を配置したり、日本語講師が学校を訪ねて教えたりする制度があった。それらの制度を活用するほか、教室では英語が分かるオリビアさんの隣に英語が得意な級友に座ってもらい、言葉の壁の克服に努める。使っていないランドセルを教諭の知人から調達して提供するなど学用品も援助した。村田校長は「児童一人一人が事情を理解し、学びたがっている同じ子どもだと受け止めることが大事だと思う」と強調した。
オリビアさんは「みんなが気遣って声を掛けてくれるのがうれしい」、ヤン君も「図工で紙の飛行機を作った。もっとがんばりたい」と少しずつ慣れてきた。
半面、どう生計を立てていくかとの母オルハさんの悩みは続いている。「全く新しい人生。簡単ではない」。日本政府には「もう少し具体的な支援策を示してもらえれば」と求めた。
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