小学生の交通事故は5月下旬~6月がピーク 死者・重傷者の半数は1、2年生 命を守るための注意点は
下校中、青信号の横断歩道で2人死傷
3月24日午前11時ごろ、名古屋市瑞穂区の交差点で、青信号の横断歩道を渡っていた女児2人が直進してきた乗用車にはねられた。1人が亡くなり、もう1人は重傷を負った。小学校の修了式からの帰宅途中だったという。
友達ができて行動範囲が広がる時期
警察庁は3月、小学生の交通事故について2017~2021年の5年分を分析して発表した。それによると、登下校を含む歩行中の死者・重傷者は、全体の約6割を占める2522人で、半数は1、2年生。5月下旬から6月にかけて最初のピークを迎える。
子どもの事故防止教育に詳しい東洋大教授の内山有子さん(50)は「友達ができて行動範囲が広がることが大きい」と話す。
原因は「歩行者に違反なし」が最多
一方で、事故の原因が分かった2456人を見ると、最も多いのは歩行者側に違反がない941人。2人が死傷した名古屋市の事故のように、交通ルールを守っていても事故に遭うリスクがあることが分かる。安全を確認せずに飛び出す「飛び出し」が888人と続いた。
こうした結果を受け、内山さんは運転者に対し「横断歩道の手前で一時停止をする、『ながら運転』はしない、など当たり前のことを改めて心にとどめて」と強調。その上で保護者に対しては「大人とは違う子どもの特性を踏まえ、普段から注意点を繰り返し伝えるのが大事」と呼び掛ける。
飛び出し防止 横断時は手を上げて
まずは事故原因第2位の「飛び出し」の防止だ。子どもは集中すると、周りが見えなくなりがち。友達を見つける、転がったボールを追い掛ける…。「道の向こうで友達が呼んでも絶対に飛び出さないでね」など具体的に伝えることが必要と言う。
視野が狭く、車に気づくのが遅れるのも子どもならではだ。見通しの悪いカーブ、駐車中のトラックや電柱の陰になっているなど視界が悪い場所では「もしかしたら車が来るかも」と注意することを意識付けしたい。運転手の目に留まりやすいため、横断時には手を上げるよう促すのもいい。
年に2回は親子で通学路をチェック
道路状況は地域によって違う。内山さんは「年に2回は親子で通学路を歩き、危険な場所をチェックしてほしい」と言う。例えば、愛知県庁や市役所に近い名古屋市中区の名城小。周辺でマンション建設が進むため大型車が多く行き交う。車道が広いため、路上駐車も多い。
同校は月に1度、建設業者と、工事の進捗(しんちょく)や通学路への影響などに関する情報を交換している。「道がふさがれ、迂回(うかい)路が頻繁に変わると幼い子は混乱して事故のもとになる」と吉野徹教頭(47)は理由を説明する。「危険に応じて臨機応変に判断できるのは小学高学年から」と内山さんは指摘する。「特に低学年の子どもは、どうしたら安全を確保できるか、親や教師ら周囲の大人が常に考えてほしい」