児童館は廃止か存続か 先進地域だった杉並区 19日の区長選の争点に
砂上麻子 (2022年6月16日付 東京新聞朝刊)
施設老朽化などに伴い東京都杉並区が進める児童館を廃止して施設再編と子育て機能を別施設に移す計画を巡り、19日投票の区長選で議論が交わされている。
現職は「廃止と再編」 新人2人は「存続」「拡充」
現職の田中良さん(61)は「児童館の機能を移転しており、児童館の役割がなくなるわけではない」と主張する。これに対し、新人で元区議の田中裕太郎さん(46)は「施設再編整備計画は見直すタイミングに来ている」と存続を訴える。また、新人の公共政策研究者の岸本聡子さん(47)は「児童館は児童福祉の視点から拡充し、以前と同じ数に戻す」との考えだ。
杉並区は1970年代から児童館の設置を進め、小学校区内に1つ児童館が設置された先進地域だ。
施設老朽化による改修費負担が増加。区は2014年3月策定の区立施設再編整備計画に児童館の廃止と機能移転を盛り込んだ。
計画では、児童館を廃止して乳幼児向けの「子ども・子育てプラザ」や学童クラブ専用施設、コミュニティー施設に利用。児童館にある学童クラブは小学校の空き教室に設置し、小学校に「放課後等居場所事業」を導入し放課後や夏休みの遊び場を確保するなど児童館の機能を分割する。
41児童館のうち既に14館を廃止した一方、14カ所設置予定の子ども・子育てプラザを5カ所開いた。
一部の保護者からは廃止に反発する声が上がる。また、機能移転で乳幼児や小学生、中学生が別々の施設利用となることに「異なる世代が交流する機会が減ってしまう」との声もある。
一方、杉並区は「共働き世帯も増え、児童館だけでは対応に限界がある」と指摘する。児童館の学童クラブを空き教室に移して定員を増やす方針だ。方南児童館は2024年度から学童クラブ専用になり、定員は現在の118人から約80人増えるという。