八街児童5人死傷事故から1年 安全のため通学バス導入…できない市町村の苦悩 国の補助金は「4キロ以上」限定
「ひかれそうで怖かった。今は安心」
6月上旬の午前7時ごろ、白井市内の民間バス停留所。市立白井第二小学校の通学バスが停車し、児童らが次々と乗り込んでいった。八街市の事故を受け、市内の9小学校のうち同校を含む2校で、本年度から試験的に通学バスを運行。同校の小学5年の女子児童(10)は「通学路の道が細くてひかれそうで怖かったけど、今は安心」と笑顔を見せた。
工業団地が近くにある同校の通学路はトラックが多く通り、一部で路側帯が狭いことなどから危険とされていた。子どもが通うパート女性(48)は「道路を広げてほしいと市や学校に要望を出していた」と明かす。
現在、全校児童88人のうち7割に当たる63人が通学バスを利用。3ルートに分かれ、各ルートに2便ずつ、片道約20分で走行する。運行は民間のバス会社に委託している。
2校で3300万円 白井市の単独予算
2校の通学バス運行にかかる年間費用は約3300万円。全額を市単独予算でまかなう。担当者は「他の小学校でも導入したいが、予算の都合上難しい」とこぼした。
千葉県内では、事故前の昨年6月時点で54市町村のうち32市町で通学バスを導入。事故を受け新たに白井、八街の2市が加わった。残りの自治体は「委託先のバス会社を探すのが大変」(千葉市)「予算の確保や、明確な基準がない中で運行する学校を決めるのが難しい」(鎌ケ谷市)などとして導入に踏み切れていない。
菅義偉前首相は事故後の7月、登下校時の通学バスの利用を全国的に促す考えを示した。自民党の有志の国会議員による公立小学校に通学バス導入を目指す連盟も立ち上がった。
「市町村単位では限界。国が対策を」
一方、国は、通学バス利用の拡大に向けた具体的な方向性を示していない。国の制度では、補助金の支給は学校の統廃合などにより4キロ以上離れた場所に住む子どもがいる場合に限定されている。文部科学省の担当者は「要件緩和の予定はない」と話している。
県内のある自治体の担当者はこう訴える。「通学バス運行は、市町村単位で取り組むのには限界がある。国には、現状に即した対策を打ってほしい」