通学路の安全を守るのは「学校」じゃない 家庭・地域・警察の役割分担は?〈川崎殺傷事件から考える〉

(2019年6月25日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 川崎市で5月に起きた殺傷事件では、通学中の児童らが狙われました。登下校時の子どもの安全について、あらためて考えた保護者も多いことでしょう。学校運営などが専門の教育研究家、妹尾昌俊さんに通学中の安全は誰が守るのか、考えを聞きました。

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通学路の「指定」は学校、「安全確保」は保護者

―こうした事件や事故のたびに、文部科学省や教育委員会が学校に安全確保を求めます。

 通学路は各学校が決めるので、より安全な経路を指定する責任は学校にあります。ただ、日常的な安全確保は保護者が責任を持つ領域。教師が登下校中に付き添うようにと呼び掛けるのは、予算もかからずすぐできますが、教師の本来業務ではありません。学校にできるのは、通学中に気を付けるべき箇所を保護者と共有することくらいです。

―通学中の安全確保は学校や教師の役割ではない?

 学校での事故によるケガなどを補償する災害共済給付制度では、登下校中も「学校管理下」の範囲で補償の対象なので、誤解されやすい。でも、学校保健安全法が定めた学校の役割は、交通安全のルールを教えたり、保護者や警察と連携したりすること。安全確保まで求められていません。

 学校の働き方改革について議論した中央教育審議会(中教審)でも、登下校時の見守り活動は、基本的には学校や教師の本来的な業務ではないと整理しました。子どもの安全を気に掛けない教師はいないと思いますが、日常的な見守りなどまで求めれば、教師の役割や責任は際限なく広がってしまいます。

地域ごとに「大人の目」増やすことが最大の防御

―具体的にどう子どもの通学中の安全を守っていけばいいのでしょう。

 川崎では痛ましい事件となりましたが、スクールバスでの通学は本来なら安全性の高い方法です。他の選択肢としては、小学生のうちは家庭で送迎するというのも一つだと思います。

 ただ、それができない家庭も多いので、地域単位で見守りを増やすしかありません。その際、国が一定の補助をした上で、都道府県や市区町村がある程度予算をかけて、子どもがよく通るところに警備員や警察官などを配置することは、抑止力の点でも有効だと思います。それでも今回のようなことは防げない可能性も高いですが…。

 一般の地域住民も含め、人の目を増やすことは最大の防御。強制はできませんが、これからますます増える地域の高齢者に朝の30分と低学年の下校時間など、通学路で見守ってくれるよう呼び掛けるなど、子どもを一緒に育ててくれる大人を増やしていくのがいいと思います。子どもにとっても、地域に頼りになる大人がいる、という安心感にもつながります。

―役割分担を社会で共有することも必要ですね。

 今回のような凶悪な事件や暴走運転による被害などを前に、教育委員会が学校に「対策を指示した」というのはポーズにしかなりません。通学時の安全は一義的には各家庭、治安や交通安全は警察、など責任の所在を理解した上で、予算を付けて専門職員を配置し、学校と連携していくことが必要だと思います。

せのお・まさとし

 教育研究家。全国各地で教員向けなどの研修を手がける。学校業務改善アドバイザー(文部科学省委嘱)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員。国の「部活動のあり方に関するガイドライン」を検討する有識者会議の委員も務めた。

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