Z世代の高校生は参院選をどう見ていますか? 若者の投票率は低迷しているが…18歳選挙権、5度目の国政選挙
国政選挙での10代の投票率
18歳選挙権が初めて導入された2016年参院選は46.78%で、20、30代を上回った。2019年参院選は32.28%に急落し、全体より15ポイント以上低かった。衆院選は2017年、2021年ともに40%台前半だった。衆参いずれも50代以上は60%を超えることがほとんどで、その差が目立っている。
フードパントリーに取り組む3年生「高校生でも社会に参加できる」
筑波大付属坂戸高校(坂戸市)3年の高橋愛美(まなみ)さん(18)と亀谷凪沙(なぎさ)さん(17)は、貧困世帯などに食料を無償配布するフードパントリーに取り組む。活動を通じて若者も社会に積極的に関われると知り、それが多様性につながると感じている。政治の世界にも若い世代が増えてほしいと願う。
同校のフードパントリーは昨年2月に始まった。現在はメンバー約20人で2カ月に1回、校内で実施。地元のひとり親家庭など20世帯が訪れ、寄付された飲み物やおやつ、缶詰などを配っている。
活動は生徒の働き掛けで始まったが、地元企業や坂戸市も関わる。当初2人は「大人が主導権を握るのかな」と不安もあったが、実際は自分たちの考えも尊重され、年齢を気にせず意見を出し合いながら活動しており「高校生でも社会に参加できる」と自信を持てた。
「私たちのことを同年代の高校生や中学生が知れば、『自分たちにもできる』と社会活動に挑戦するかもしれない。大人だって『高校生にできるなら、自分たちはもっと頑張れる』と刺激になるはず」と高橋さん。自分たちの取り組みが社会全体を活気づけるきっかけになると信じている。
大人のメンバーには運営や企画の課題を指摘してもらうなど、助けられることは多い。一方で亀谷さんは、SNSを駆使した情報発信や最新のトレンドをつかむのは、自分たちの方がたけていると自負する。「意見のぶつかりを恐れず、いろいろな世代で話し合うことで一番いい成果が生み出せる」。それは政治の世界も同じはずで、「若者は社会経験が少ない分、かえって常識にとらわれない斬新な意見が出せる」と力を込める。
6月に18歳になった高橋さんは、今回の参院選で初めて選挙権を得た。投票所入場券に書かれた自分の名前を見て「国を動かす責任が自分にも来たと感じて、緊張した」という。政治への関心も芽生えてきたが、ニュースで見る議員は「おじいちゃん」が多い印象だ。「社会活動で高校生が大人の世界に入り込む隙間があるように、政界でも若い人が隙間をこじ開けてほしい」
授業でボートマッチ体験 投票デビューは「必ず行く。お金より人助けの候補を」
1日、さいたま市の県立いずみ高校。参院選の争点である消費税減税や改憲など10の質問に、3年生が賛否を「◎」や「×」で書き込んでいた。各党の回答も比較し、自分の考えに最も近い投票先を探る。近年定着してきた「ボートマッチ」と呼ばれる仕組みだ。
同校は全校生徒720人を対象に、参院選の模擬選挙を先月27日から始めた。投票は任意で、8日までの期間中は専用サイトからいつでも投じられる。1日の授業は投票に向け、各党や埼玉選挙区の候補者を知るための事前学習だ。
生徒たちが注目した争点の一つが、身近な話題でもある高等教育の無償化。グループでの話し合いでは「自分が親になった時に助かる」と賛成意見もあれば、「借金が多い日本の財政的に大丈夫なのか」と疑問の声も上がった。
こうした多様な見方も参考に、18歳の生徒は参院選で「投票デビュー」する。その一人、鈴木崇正さんは「票を入れることがまずは大事と祖父に言われ、必ず投票に行く」。ボーイスカウト活動の経験から「お金より人助けに重きを置くような候補を選びたい」という。
担当する華井裕隆教諭は「期末試験も重なり、模擬選挙の投票率は10%くらいでは」と厳しく予想するが、「関わりのあるテーマを入り口に、広い目で社会問題を考えられるようになってほしい」と期待した。
期日前投票の立会人に 政治に関心はあるが…選挙で世の中は変わるのか
皆野町役場に設けられた参院選の期日前投票所では、県立皆野高校の生徒が投票立会人を務めている。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた2016年から、若者に関心を高めてもらおうと町選管が全ての選挙で依頼。これまで延べ26人が携わった。
今回は同校3年の久保涼太さん(18)と浅賀桃奈さん(18)の2人。選挙期間中の土、日の計5日間、午前8時半~午後2時15分に投票の様子を見守っている。
久保さんは、手元の選挙公報に目を通しながら「主張が具体的で矛盾がない候補者に1票を投じたい」ときっぱり。4月の秩父市議選で期日前投票した浅賀さんは「地域のコミュニティーの拠点整備など、小さなことの積み重ねを重視しているかを見極めて投票したい」という。
2人は、若者も政治に関心があるし、投票に意味があると分かってもいると口をそろえる。一方で「選挙を経ても世の中が変わったと実感できない」とも。
久保さんは、政治の側には印象的な言葉を並べるだけでなく、主張の中身を具体的に解説するよう求める。同時に有権者にも「解説を読み解く教育が必要」。浅賀さんも「模擬投票など、政治や政治家にシンパシーを感じることができる多面的な教育を積極的に取り入れるべきだと感じます」と話した。