受けないほうが得? 都立高入試の英語スピーキングテスト、不公平になりかねない「仮想得点」 11月の実施は目前だが…
英語スピーキングテストとは
英語の読む、書く、聞く、話すの4技能のうち、話す力の到達度を測る。11月27日に実施予定。ヘッドホンとタブレット端末を使い15分間で8問に解答し音声を録音する。問題ごとに英文読み上げや英語で意見を述べる能力などをみて100を上限にスコアをつける。スコアはA-Fの6段階評価に変換し、都立高入試で20~0点を加点。2021年秋のプレテストは公立中592校の約6万4000人が受験。平均スコアは53.7、C評価(入試では12点)が27%で最多だった。
学力試験の得点が同じ受験生の平均点
「スピーキングテストの勉強を頑張った子が損をする可能性があり、(テストを)受けない子は得はしても損はしない制度だ」
29日の一般質問に立った都民ファーストの会に所属する米川大二郎都議は取材に対し、テストの問題点をこう指摘した。米川都議は知事与党の同会派でテストの入試導入に異議を唱える1人だ。
11月に予定されるテストは、都内の公立中3年生の全員が対象。来年度の都立高入試で、学力試験の得点と中学で学ぶ9教科の成績を反映した調査書点の合計に、新たに加えられる。
国立中と私立中の生徒にはテストを受けない選択肢があり、テストなしに都立高を受験した場合、「仮想得点」が与えられる。仮想得点は、英語の学力試験の得点が同じ受験生らの平均点を算出。テストの評価は4点刻みのため、学力試験で上回る受験生が、テストを受けたばかりに、テストを受けなかった受験生より、合計得点で下回ってしまう逆転現象が排除できない。
仮想得点を狙う「戦略的不受験」も?
本年度の都立高入試で国立中、私立中の受験生は全体の約2%を占めた。仮想得点の算出方法について、浜佳葉子都教育長は29日の都議会本会議で、「合理的な最善の方策」と強調した。
公立中の生徒も病気や事故など理由書を提出すれば、テストの受験を辞退し、仮想得点が得られる。米川都議は「公立中の生徒も受けない方が得だと考え、戦略的不受験が起きかねない。入試の不公平を解消するのが行政の役割ではないのか」と批判した。
長男が区立中3年の母親(51)は、スピーキングテストのパンフレットを見ながら、長男が「受けない方が得するんじゃないの」とつぶやくのを聞いた。都教委に対し「スピーキング能力を上げたいという目的には賛成するが、不完全なテストを入試に使うより、公立中でのカリキュラムや教材の発展に知恵を出してほしい」と注文した。
運営委託先はベネッセ 個人情報流出の被害に遭った保護者「信用しろという方がおかしい」
個人情報の登録を拒否できない仕組み
スピーキングテストを受ける生徒は受験登録時、ベネッセのサイトに個人情報を入力するが、「個人情報の取り扱いに同意しない選択肢がない」(住民監査請求を担当する大島義則弁護士)ため、拒否できない。
この母親は「今回のテストに泣く泣く登録したが、個人情報を扱う委託会社について、学校も都教委もベネッセも答えてくれなかった。信用しろという方がおかしい」と憤る。
調査書点と同等の評価…「許せない」
ベネッセは、受験生の音声データをフィリピンに送って採点するが、誰が、何人で、どのように採点するか、明確な説明がないことも懸念されている。
母親は「次女は英語の中間、期末テストやスピーチなど英語の授業を手を抜かずに頑張ってきた」と強調する。その成果である英語の調査書点とスピーキングテストが入試で同等の評価と知った日、「学校から帰ってきて『許せない』と怒りで震えていた」と振り返った。