こんな小学校が増えたら、世の中が変わるかもしれない。映画「みんなの学校」

瀬野由香

映画「みんなの学校」の舞台、大空小学校 ©関西テレビ放送

 私は7歳の女の子と3歳の男の子を育てているのですが、最近、映画を通して素敵な小学校の存在を知りました。「こんな小学校が増えたら、世の中が変わるかもしれない」。わが子を通わせたくなるような学校でした。

 映画のタイトルは「みんなの学校」。真鍋俊永監督、関西テレビ放送製作のドキュメンタリー映画です。以前から気になっていた映画で、自主上映会があると聞いて足を運びました。

映画「みんなの学校」の一場面 ©関西テレビ放送

 舞台となる「大空小学校」は、大阪市住吉区にある公立小学校です。ここでは障害のある子や問題を抱えた子も、普通学級で一緒に学びます。

 「公立の学校はすべての子どもが安心していられる場所であるべき」。木村泰子校長(撮影当時)は、2006年4月の開校当初から、不登校ゼロを目指してさまざまな背景の子どもたちと関わってきました。

 不登校になっていくつもの学校を転々としたり、授業中じっとしていられなかったり、知的障害があったり。そんな子たちが、友達や先生、学校の職員や地域の人に支えられ、見守られながら一緒に育っていきます。

映画「みんなの学校」の一場面 ©関西テレビ放送

 私にとって特に印象的だったのは、子どもたちが一人ずつ前に出て、自分の将来の夢を発表する「2分の1成人式」の場面です。

 友達に暴力を振るって木村先生に叱られてばかりいた4年生の男子児童は、涙を見せながら「自分の目標は暴力を振るわないこと。暴言を吐かないこと」と言いました。他の子が将来なりたい職業を発表する中で、彼が言ったのは今の自分を直したい、という具体的な目標。これからの自分に必要なことに彼自身が気付いたことが伝わり、私も胸が熱くなりました。

 また、着任2年目の若い教師が感情のままに子どもを叱りつけた後、その子を残して立ち去る場面では、木村校長が「あのままあの子が窓から飛び降りたらどうするの?」と教師を諭します。支えられているのは子どもばかりではありません。扱いが難しい子を受け持つ担任を、ベテラン教師や特別支援員が見守り、教え、支える。ここではみんながみんなを支えているのです。

映画「みんなの学校」の一場面 ©関西テレビ放送

 本当に必要なのは、一人ひとりの違いを認められる人を育てていくこと。映画を見終わって、そう思いました。自分と違うものを排除する風潮が強まっている世の中ですが、問題を抱える子を支えることで、やがて周りの子が変わり、その親が変わり、地域が変わっていく。小さな小学校のごく当たり前の取り組みから、自分と違う他者を認められる社会への大きな一歩が始まっていると思いました。

 この映画をたくさんの人に見てほしい、特に子どもたちに見てほしいと思いました。小学校の道徳の授業などで、上映してもらえたら、みんなどんな感想を持つでしょう?

 映画「みんなの学校」は、全国各地で自主上映中。上映会を開きたいという申し込みも受け付けています。詳しくは「みんなの学校」公式サイトでどうぞ。

映画「みんなの学校」の宣伝チラシ

(東京新聞 子育て部 facebookページの2018年5月2日付記事を転載しました)

コメント

  • 私は今、インクルーシブ公園を地域に作りたいと動いていますが、まさに「自分と違うものを排除する風潮」が怖いからです。大人になってから変えるのはなかなか難しいことですが、子供の頃からこういう教育を受けてい
     
  • 家庭以外の場で一人一人の個性に向き合って、認め合いながら育てていく事は本当の生きるということではないかと考えさせられました。 このような素晴らしい学校が増えていきますように!