「給食中の会話は可能」文科省が黙食不要を通知 現場は歓迎と戸惑い 給食でおしゃべりした経験がない小学3年生たち
机を向かい合わせにせず、大声は控える
通知では、学校向けの衛生管理マニュアルでは以前から「黙食」を求めてはいないとした上で、給食中は飛沫(ひまつ)が飛ばないように机を向かい合わせにしない、大声での会話は控える-などの工夫をすれば、給食時に「会話を行うことも可能」と明記した。マニュアルに変更はない。
政府の対処方針で、感染防止対策の説明にあった「飲食はなるべく少人数で黙食を基本とし、会話をする際にはマスクの着用を徹底」との記述は、今月25日に削除されていた。
通知では、マスクにも言及。子どもたちのコミュニケーションに影響があるとの指摘を踏まえ、マスクを外す場面を設定したり、不要な場面では積極的に外すよう促すなど、めりはりある指導を求めた。
前進だけど「黙食のほうが楽」な子も
「いいんだよ」と言っても、すぐには…
「すごい前進」。東京都内の小学校に勤務する30代の栄養教諭の女性は言う。
教諭によると、校内児童へのアンケートでは「給食の時間が耐えられない」といった声が少なくないという。嫌いな食べ物が多い子にとって、ただ黙って食べる給食は、ひたすら「嫌い」に向き合う苦痛の時間でしかないからだ。「お友達と楽しく食べていると、苦手な野菜も、きょうは食べてみようかな。そんな気持ちになれるのも、給食の不思議な力なんですが…」と栄養教諭は話す。
さらに最近は、「黙食のほうが楽」という児童もいて、危機感を感じるという。「社交性やマナーを養うのも、給食の役割。それを取り戻したいけど、いきなり『お話ししていいよ』と言っても難しい。マスクに慣れて、顔を見られたくない、という子も多いし…」
「私は大急ぎで食べ終えて、子どもたちが静かに食べるように、本の読み聞かせなどをしていました」。今春まで都内の小学校で2年生の担任をしていた60代女性は、そう振り返る。
今は3年生となった児童たちは、入学してすぐコロナ禍で、おしゃべりしながらの給食の経験は皆無だ。「ずっとコロナ、コロナと騒がれ、感染の恐怖を感じながら生活してきた。そんな子どもたちに『給食でおしゃべりしても、いいんだよ』と言ってもねえ…。昔のような雰囲気は、すぐには戻らないのでは」と懸念する。