「隣の声が聞こえた」公平性に疑問の英語スピーキングテスト 都教育長の「適切に実施」答弁に受験生は絶句「起きたことを直接伝えたい」
イヤーマフ越しにふざけるような声
「これ、TikTok(ティックトック)ではやってる『ハッピースマイル』だ」。11月27日の英語スピーキングテストの最中、文京区立中学3年の女子生徒(14)は、ハッとした。ティックトックは、スマートフォンなどで楽しむ動画投稿アプリ。そこで流行するフレーズ「感謝、感謝」「ハッピースマイル」と発する男子生徒の声が、外部音を遮断するはずのイヤーマフ越しに聞こえた。
テストは都教委が都内すべての公立中学3年生に課し、来春の都立高入試の評価資料として使用する方針。このため、都立高を受験しない生徒にとってテストの重要度は高くない。女子生徒は「都立高志望の人は必死だったと思うけど、あの男子生徒はふざけているように感じた。都立、私立など志望別に教室を分けてほしかった」と話す。
練習問題を解いて準備していたが、実際のテストは予想より難しかった。来年1月中旬の結果を待つのが不安で、母親と数日間話し合い、都立高入試はあきらめた。「ずっと目指してきたから、悩んだし悔しかった。あのテストがなければ変えなかったかも」とうつむく。
「本当に教育長が言ったんですか」
女子生徒に都議会での浜教育長の答弁を伝えると、「本当に教育長が言ったんですか」と絶句。「教育長なら、全容を知っていると思っていた。テスト会場で起きていたことを直接伝えたい」と訴える。
取材に応じた5人全員が指摘した他の受験生の声について、東久留米市立中に通う男子生徒(15)は「右隣の人が『How much』という声が聞こえた」と指摘。同じ中学に通う男子生徒(15)は、テスト本番前のタブレット操作確認の際に「自分以外の声が録音されていた」といい、本番でも別の生徒の声が録音されたのではとの不安を口にした。
ベネッセの類似テストで「対策」も
受験生の間では、事前対策の差も顕著だった。都立の中高一貫校に通う女子生徒(15)は、学校でベネッセコーポレーションの類似テスト「GTEC」を中学1年から毎年受けて対策。一方、他の4人が通う公立中では、GTECの受験機会はなかった。
テストの入試活用に反対する都議会議員連盟などが行ったアンケートでは、音漏れの指摘は166件寄せられた。公正性に疑問が残るテストを都立高入試の評価に使うことに問題はないのか。浜教育長は7日の都議会代表質問で「事業者や都職員の報告では、音声は聞こえても、発言内容を聞き分けることはできず、解答に影響はなかった」と述べ、予定通り、都立高入試での活用を進めるとした。
12月の都議会文教委員会で、一部の都議はテストについての報告を求めたが、自民、都民ファーストの会、公明が賛同しなかった。報告は来年2月の定例会まで持ち越され、同月始まる都立高一般入試までの検証は難しくなっている。
英語スピーキングテストとは
東京都教育委員会と協定を結んだベネッセコーポレーションが運営。11月27日に約6万9000人が受験した。音を遮断するイヤーマフとマイク付きイヤホンを使い、タブレットを見ながら15分間で8問に解答。録音された音声はフィリピンで採点される。来年度の都立高入試で初めて評価資料として使われ、総合得点1020点中、テストが20点を占める。11月27日に病気などで受験できなかった生徒向けに12月18日を予備日とし、約2000人が受験予定。結果は来年1月中旬以降に通知される。
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