英語の早期教育は必要? 12カ国語を話す”語学の達人”ピーター・フランクルさんは懐疑的「母語を大切に」

(2021年11月24日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
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「大切な言語は母語」と話すピーター・フランクルさん=東京都渋谷区で

 「子どもには英語で苦労させたくない」―。こんな親心から、子どもを幼少期から英会話教室などに通わせる親も少なくない。ただ、12カ国語を話せる「語学の達人」で数学者のピーター・フランクルさん(68)は、英語の早期教育に懐疑的だ。小さいうちはまず、母語である日本語をしっかり身に付け、他者や異文化への好奇心を育む方が、結果的に英語学習に役立つと助言する。 

「国際人」の資質 幼少期にどう育むか

 「視野を広げ、人生を豊かにできる」。ピーターさんは外国語を学ぶ魅力をこう話す。さまざまな国・地域の人と交流でき、日本で公開されていない映画や書籍にもアクセスでき、従来と違う発想が得られ、生きる力が養われるからだ。

 一方で、「英語ができても真の国際人とはいえない」と指摘。大切なのは「国際人」としての資質で、それを育む大事な時期が幼少期という。「真の国際人は、相手と自分が違うという多様性を認めつつ、異なる意見を聴く耳を持ち、お互いの共通点を探して友達になろうと考え、行動できる人」と説く。

 その土台となるのが、日本人としてのアイデンティティー。幼少期から絵本の読み聞かせや、かるた遊びなどを通じ、日本語をはじめとする豊かな日本の文化に触れることで心のよりどころをつくる。母語を身に付けると、心の安定や自己肯定感をもたらし、学力や能力を伸ばす上で欠かせない土台となるという。ただ、自国の素晴らしさにしか目を向けない内向きな態度や、他国を見下してはばからない考え方は「国粋主義」であり、「愛国心」ではない、と強調する。

「日本はアジアを軽視し、内向き志向に」

 「自分が来日した1980年代の日本人は、多様な外国文化に好奇心旺盛だった」と懐かしむ。1990年代のバブル崩壊後は米国一辺倒でアジアを軽視するようになり、内向き志向が強まったと感じるという。

 「子どもは好奇心旺盛で、生まれつきの国際人。なのに成長するにつれて心に壁をつくるのは、子どもに偏見や先入観を持たせるような言動を大人がするからではないのか。自分と違うものへの興味や関心を深めるような育て方をすることが、世界の共通言語である英語学習への意欲を自然と高める近道になる」

写真 ピーター・フランクルさん

 ピーターさんの著書「子どもの英語教育はあせらなくて大丈夫!」(草思社)では、算数の早期教育の是非にも触れている。

発音にコンプレックスは不要です「大切なのは形式より内容」

 ピーターさんはユダヤ系ハンガリー人で、来日して約40年。母語のハンガリー語や日本語をはじめ英語、ロシア語、中国語など12カ国語が堪能だ。110カ国を訪れた経験も持つ。

 最初に覚えた外国語はドイツ語。親の勧めで6歳から学び始めたという。だが、語学の習得には繰り返し練習など地道な努力が欠かせない。「小さい頃は興味を持てず、ほとんど身に付かなかった」と振り返る。

 転機となったのは中学3年の夏休み、ドイツ語が母語のオーストリア人家族と交流したこと。「もっと上手に話せたら」との悔しさがバネになり、ドイツ語力が短期間で飛躍的に伸びた。「本人が学ぶ意欲を持たなければ、語学力は向上しない」と実感を込める。

 ピーターさんによると、英語は中学や高校から始めても高いレベルに到達できる。ネイティブ並みの発音ができなくても、コンプレックスを持つ必要はない。「大切なのは形式よりも内容。日本人らしい発音でも自分の思いを素直に表せれば認められるはずだ」

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コメント

  • 匿名 より:

    概ね書かれていることに賛成です。
    現在フランス在住で、英・仏語を仕事で使ってます。自画自賛で恐縮ですが、英語圏に留学や在住したことはなく、ひたすら自分で外国語を話すことを日常化させてました。中・高校生時代から日頃映画を観て、フレーズをコピーしては現実で使うを繰り返してたのが効いたな、と感じます。段々議論のレベルが進むに連れて、今度は「しゃべれて当たり前」な空気になってきたので、文法をひたすら学び、毎日気になった表現や単語はメモして、歯磨きの要領で話さなきゃ死ぬ、みたいにしてたらいつのまにか寝言が英語や仏語になってきました。それ以降は記事にあるように「文化理解」がキモになってくると思います。歴史的に植民地化や政治的な理由がどのように言語に影響し合ってるのかを知るほど、段々他の言語を覚えるのが比較的簡単になってきました。
    ぼくは幼い頃から映画や本、カルチャーが好きだったので、そこから入り、それをもっと知るためには言語をのばさねば!と好奇心を糧にしていたので、自らの子供にも外国語教育は生きる術+好きなものから入る、ようにさせてあげれたらなと。
    あとは自らが移民という立場に立ったこと、それが多民族国家だったフランスだったことも大きかったと思います。アジア人の社会的立場が弱く、ブラックアフリカ、アラブ諸国、アジア諸国系と共闘しないと社会で生きていけなかったので、異なる文化に興味を持つ、違いを受け入れることは、言語を理解する上でも本当に大切だと思います。

  • 匿名 より:

    英語に限らず、非母語を身につける環境と理由がなければ、小学校4年生から英語を始めるにしろ、これまで通り中学校1年生からにしろ、期待される効果は挙がらない。だから、ふつうの人が中高で6年間英語を学んだけれども、それを駆使するレベルに到達することはない。それは、日本の英語教育に問題があるとの簡単な話ではない。「英語を話せるようになりたい」との願望は、必ずしも理由とはならない。私が1960年代に大学生だったころ、横浜在住のカナダ人家族で住み込みの“お手伝いさん”をしていた青森からの30代女性は、中学校を卒業していないにもかかわらず、私がへぇと驚いたほど流暢な英語話者だった。つまり、外国語を習得するのは“語学”を学ぶのではなく、母語以外のコトバを身につけることに他ならない。

  • 匿名 より:

    フランクル氏が言うように外国の人の言う事を理解したい、また外国人にどうしても伝えたいという強い気持ちや伝えたいものを持っていないと外国語は上達しないと思いました。

    米国に擦り寄るばかりでアジアを無視しているのは先の大戦の結果について受け止めきれてないからでしょう。発音が少し拙くても大事な話の時は聞いてくれる外国人は多いです。英語の能力が日本人は低いと言われるのは外国人に向き合う覚悟がないからだと思います。歴史と文化をしっかり学べず土台がない人間は外国や外国人と向き合う術はありません。

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