子どもも本物の候補に投票してみよう 統一地方選の投開票日に「さいたまこども選挙」

藤原哲也 (2023年4月6日付 東京新聞朝刊)

3月4日に開かれた事前ワークショップの様子=さいたま市見沼区で(樽井さん提供)

 子どもたちも本物の候補者に投票してみよう-。小中高生による本格的な模擬投票が、統一地方選前半戦の投開票日の9日、さいたま市内で実施される。名付けて「さいたまこども選挙」。自分の街を考えるきっかけにしてほしいと親世代が企画した試みだ。実行委員の樽井花子さん(46)=埼玉県上尾市=は「生活の中で子どもたちでもしっかり意見を言っていいことを選挙を通じて伝えたい。今こそ民主主義の土台を作り直さないと」と力を込める。 

候補者に質問、本格的な模擬投票

 きっかけは若者の投票率が伸び悩む中、主権者教育の必要性を感じた危機感からだった。昨年秋に神奈川県茅ケ崎市長選で実施されたこども選挙をモデルに準備。9日投開票の埼玉県議選に合わせて企画した。

実行委員の樽井花子さん

 投票所は、さいたま市見沼区のNPO法人さいたまユースサポートネットの事務所に設置。見沼区は埼玉県議選の南6区(定数2)で、そこの実際の候補者に投票する仕組みにした。

 3月に入り、子どもが選挙の目的を学ぶワークショップを開催。小1から高1までの6人が絵本で選挙のルールを理解後、候補者への質問を考えた。高校生からは「人格を知るには座右の銘がいいのでは」との意見があり、環境問題などを含め4問を話し合いで決めた。樽井さんは「参加者の年齢に開きはあったが、子ども同士で影響し合えたので逆に良かった」と語る。

こども基本法施行 社会に関心を

 3月31日に告示された埼玉県議選で、南6区では3人が立候補した。この3人からは、子どもたちが考えた質問への回答を得ていて投票資料に活用する。

 もともと地元でアートを通じた子どもの居場所づくりや不登校の児童・生徒の支援に取り組む樽井さん。普段から接している子どもたちには自分の街の社会課題を「自分ごととして捉えてほしい」との思いが強かったという。折しも4月1日から子どもの権利保障や意見表明の機会確保を法的に定めた「こども基本法」が施行されたばかり。「社会にもっと関心を持つことにつながれば」と願う。

 9日午前10時~午後3時で埼玉県内の小1から17歳までが投票できる。実際の選挙に影響しないよう結果は25日ごろに実行委員会のインスタグラムとフェイスブックで発表予定。問い合わせは、さいたまこども選挙実行委員会=Eメール saitamakodomosenkyo2023@gmail.com =で受け付けている。

有権者になるのを見越したいい経験

◇慶応大SFC研究所の西野偉彦・上席所員(主権者教育)の話

 主権者教育は学校だけでなく、民間団体など校外でも実施できる。17歳以下の子どもたちが生の選挙を題材に候補者の名前を書き、模擬投票することは、子どもが将来、有権者となった時を見越した、いい経験になる。ただ、候補者に質問して得た回答を投票時の資料にする場合、特に選挙期間中は中立性を担保する必要がある。

低い若者の投票率

 埼玉県選挙管理委員会によると、2019年以降の県議選や県知事選を含めた5回の主な選挙のうち、2021年衆院選を除く4回で、20~24歳の投票率が最も低かった。総務省によると、20代の投票率は2021年衆院選で36.50%(全体55.93%)、2022年参院選で33.99%(全体52.05%)。年代別では18歳からの投票権が認められた2016年以降5回の国政選挙で20代が最低となっている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年4月6日