中学生のアイデア引き出す「防災サバイバル実習」 簡易トイレ設置にも挑戦
梅村武史 (2018年10月11日付 東京新聞朝刊)
栃木県足利市のPTA活動経験者らで組織するボランティア団体が市内の中学校を巡り、防災ワークショップを続けている。いざというとき、生徒自ら考え、判断し、行動する能力を身に付けるための模擬実習だ。東日本大震災翌年の2012年2月から始め、今年で7年目。災害時の即戦力、リーダーとして、地域防災力は着実に蓄積されている。
「トイレが使えない」「食料が…」「赤ちゃんが…」
模擬実習は年20回前後の開催で累計約150回に上る。同市駒場町の富田中学校で6日、開かれたワークショップを取材した。同校では総合的な学習の時間を活用しており、3年生の生徒約40人が体育館に集まった。
主催する「足利市PTA・OB会」の上武敬和(ひろかず)代表(58)が進行を担い、同校の現役PTA役員らを含む10数人が裏方として支える。
この日の模擬実習は避難所になった体育館をめぐる課題。「届いた食料が人数の半分しかない」「トイレが詰まって使えない」「赤ちゃんが泣きやまない」「体育館入り口の段差で車いすが中に入れない」…。
これらのトラブルをボランティアメンバーが迫真の演技で表現する。生徒は9班に分かれ、対応策の議論を始めた。上武代表が生徒に要望するのは(1)自分から発言する(2)他人の意見を批判しない(3)スピード感を意識する-の3点だ。
アイデア続々、ワークショップで高まる防災意識
はじめは戸惑っていた生徒たちだが徐々に手が上がり始める。
「家庭科室の包丁で食料を切り分けよう」「保健室を赤ちゃんの部屋にしたらいい」「跳び箱の踏切台を使えば体育館がバリアフリーになる」など学校の機能を生かしたアイデアが次々と飛び出した。
生徒は段ボールを使った避難所の仕切りづくりや簡易トイレの設置も挑戦。見守った同校の中山次男教頭は「ワークショップを通じて生徒の防災意識が高まっていくのを感じます」と目を細めていた。
上武代表は「伝えたいのは考えて行動すること。まず自分の命を守り、家族や地域のことを考え、助け合いのネットワークが広がっていく。これからも小さな一歩を積み重ねていきたい」と強調していた。