高校野球のマネージャーはお手伝いじゃなく仕切り役 フォーム修正、練習の指示、体調管理…横浜清陵高で女子2人が活躍中
野原監督が「アシスタントなら要らない」
「キャッチボール行って!」「10分後開始!」。6月の放課後、公式戦もできる横浜清陵の広いグラウンドで、石塚佳帆さん(17)と楡井(にれい)優実さん(17)はきびきびと指示を出していた。打撃練習では、前の試合の映像を選手と一緒に確認し、フォーム修正の相談に乗る。午後7時の完全下校までに練習を効率よく進めるため、時間管理にも気を配る。
入学時、石塚さんは野球好きの父や兄らの影響で「野球部のマネージャーをやりたい」、楡井さんも「裏方に興味があるし楽しそう」と入部を希望した。当初思い描いたのは、選手のお手伝い。しかし、野原慎太郎監督(40)と面談した2人は「アシスタントなら要らない」と告げられた。
ジェンダーバイアス解消「個人の能力を」
飲み物の準備など、想像していた「女子マネ」は求められていない。迷ったが「行動で示そう」と奮起した。日々、各選手の特徴や改善点を細かく記し、毎週の体重測定で体調を管理。試合での打球の分析なども重ねていった。ただ記録をつけるだけでなく、助言などを通して「自分たちも戦力になるように」。チームが強くなれるよう、時には厳しい指摘もしてきた。
家庭科教諭としてジェンダーバイアスの解消に取り組む野原監督は「男女関係なく個人の能力を生かし、マネジメントをしたらここまでできるようになった。本来マネージャーはそういう存在」と信念を語る。
選手兼任の男子マネージャーもおり、2人と協力し合う。2年生の中には秋以降、マネージャー専任となって自身の力を発揮しようと考えている選手もいるという。
選手の意識も変化「女子でも男子でも…」
部では1人に責任が偏りがちなキャプテンを置かず、内野や外野、投手、走塁など部門ごとにリーダーを設け、普段の練習を分担して進めている。マネージャーと走塁リーダーを務める3年の丸山聖悟選手(17)は、初めは2人を見て「女子もこんなことをするのか」と感じたが、今は「女子でも男子でも誰がやっても良いと思うようになった」と話す。
6月下旬、神奈川大会のベンチ入りメンバー(20人)の発表で、3年生の選手14人は全員がメンバーに選ばれた。ただ、部員は全学年で54人。皆が一丸となれるようまとめるのもマネージャーの仕事だ。
石塚さんはメンバー外となった選手に「悔しい気持ちも大事にしてほしい。(相手が)上級生でも、メンバーをより一層厳しい目で見て、気づいたことは言って良い」と語りかけた。一方、楡井さんは選ばれたメンバーに言った。「20人だけじゃなく、勝つために周りで協力してくれる人もいる。全員で頑張りましょう」。それぞれの役割を胸に、夏に挑む。