ベネッセが英語スピーキングテスト撤退 英国の公的機関ブリティッシュ・カウンシルが新事業者に 入試活用には依然反対の声も
他の応募なし 2028年度までの6年間
東京都教委によると、ベネッセと結んだ協定の期間が2023年度末で終了するため、6月9日まで事業者を募ったところ、ブリティッシュ・カウンシルのみが応募したという。
今年11月に実施予定で、来年の入試に使われる中学3年のテストはベネッセが担う。2023年度から新たに導入する中学1、2年のテストと、再来年の入試に使う中学3年のテストは、ブリティッシュ・カウンシルが運営する。期間は2028年度までの6年間。7月中に基本協定を締結する。
テストの形式はベネッセと変わらないが、採点のやり方など詳細は今後、詰めていくという。
応募しなかったベネッセ「回答控える」
ブリティッシュ・カウンシルは1934年に設立された英国の非営利組織。スピーキングを含む英語検定試験「IELTS(アイエルツ)」を運営するほか、東京外国語大と共同開発した英語スピーキングテストは東京外大の入試に活用されている。
ブリティッシュ・カウンシルの担当者は「詳細は都教委と協議中」とした上で「生徒や保護者、学校関係者が安心してテストに臨むことができるよう対応していきたい」としている。
19年度に都教委と協定を結びプレテストから携わってきたベネッセの担当者は、応募しなかったことに「回答を控える」とした。
トラブル続出「解決しない限り、入試に活用するべきではない」
音漏れ、別テストに類似…公正性に疑問
民間運営のテストを公立高入試に活用するのは全国初の取り組みとして注目を集めたが、単発アルバイトによる試験監督や、ベネッセが実施している別の英語検定試験に類似していることなど、公正性・公平性が疑問視され、入試への活用に反対する声が上がっていた。
実施後の都議会議員連盟などの調査で、「他人の解答が聞こえた」など音漏れの指摘は166件。2月の出願締め切り直前には、機材の不具合で受験生8人の解答の一部が録音されず、低く採点されていたトラブルが発覚した。
「業者が代わっても、不透明さがある」
テストは都立高入試の評価資料となり、総合得点1020点中、テストが20点を占めた。1点を争う入試で、トラブルは受験生の人生を左右することになる。
市民団体「入試改革を考える会」代表の大内裕和・武蔵大教授(教育社会学)は「民間業者による運営では、コストの面などから入試としてのレベルを維持することが難しい。不受験者の取り扱いをどうするかなど、入試に使うには依然として課題がある」と指摘する。
都内の公立中3年の保護者は「業者が代わったとしても、採点基準の不透明さやスケジュールの遅さなど、問題点がたくさんある。それらが根本的に解決しない限り、入試に活用するべきでない」と話した。
英語スピーキングテスト
2022年は中学3年生のみを対象とし11月27日の本試験には約6万9000人が受験。音を遮断するイヤーマフとマイク付きイヤホンを使い、タブレットを見ながら15分間で8問に答える。録音された音声はフィリピンで採点された。都教委は2023年度から対象を中学1、2年生にも拡大し、本年度予算に35億円を計上した。
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