「左利き書道」でも上手に書けます 用具の配置を工夫、配慮した教科書も〈子育て相談 すくすくねっと〉
右手で書くよう学校で指導されて…
小5の息子は左利きで、右手で書くよう指導される学校の書写を嫌がります。3年では左手で書いていましたが、4年で先生が代わり、右手で書くことやその先生の厳しい言動にストレスを感じているようです。先生への相談は嫌がるのでできません。教育委員会や学校のアンケートでお願いしても何も変わらず。多様性の時代。どちらの手で書くかは本人が決めることでは。(43歳)
書写以外では「矯正」は減ったが…
書写に限らなければ、左利きの人が幼い頃に右手を使うように指導される例は、若い年代ほど減っているとされる。
左利きについての情報を発信するウェブサイト「日本左利き協会」が左利きの人を対象にした調査では、1965年以前に生まれた世代では80%ほどが何らかの「矯正」を経験。一方、1996~2005年生まれの世代では36%ほどで、日本左利き協会発起人の大路直哉さん(56)は「左手で箸を使ったり字を書いたりする人は確実に増えている」と話す。
毛筆では「滴の形」が逆方向になる
では、なぜ毛筆だと左利きを直されやすいのか。動画のYouTubeで「左利き書道」を紹介している書家の仲宗根無我さん(65)は「自然に筆を下ろした時にできる滴(しずく)のような形が、左手だと右手と逆方向になる」と話す。
文字は、左から右に書くことも多く、左手では筆先が筆の軸や手の陰に隠れて見えにくい。「右手と同じように書こうとしたら、視点をもっと右側に移す必要がある」と指摘する。
「嫌々書くより、書きたい方の手で」
ただ、仲宗根さんは「左手でも上手に書くことはできる」とも。自身は右利きだが、左利きの教え子に指導するため左手での書き方を訓練して習得した。子どもに教える場合には「言葉で教えると混乱するので、実際にやってみせて、ビジュアルでとらえてもらうのがいいのでは」という。
教室では、子どもが左右どちらの手で持つかを見て、同じ手で筆を持って教えてきたという。「字には心が表れて、イライラした気持ちで書けばすぐわかる。嫌々書くより、書きたい方の手で書くのがいい」と助言する。
教科書でも「手本は右、筆置きは左」
左手で書く子に配慮した教科書も登場している。東京書籍では、毛筆を習い始める小3の書写の教科書に、左手で書く場合の用具の置き方を掲載。手本を半紙の右に、筆置きなどを左に置く形を紹介している。
小1と小2の教科書では、左手での鉛筆の持ち方も、右手と同じように紹介。硬筆で手本を見ながら書き込む欄は全学年の教科書で、手本の下か、左右両方に置くように工夫している。かつては書き込む欄が右にあることが多く、左手で書くと手本が隠れてしまっていた。東京書籍の担当者は「左利きの子が字を書くことに悩んでいて、先生も適切な指導が難しいという話を聞くことはある。要望に応えられるように工夫している」と話す。