「全米最優秀女子高生の母」ボーク重子さんの教育法が話題…”非認知能力”とは?
「テストで数値化できない力を育みたい」
重子さんは欧州に留学中だった30代のとき、フランスで米国人の現在の夫と出会った。米国へ移住し、スカイさんが生まれると、「自分で人生を切り開き、どんなときも自分らしく幸せに生きられるよう育てたい」と、教育に関する情報を集めた。
そこで出合ったのが、当時米国で注目され始めていた非認知能力だ。重子さんは「テストの点数など数値化できるものでなく、主体性や自己肯定感、社会性、自制心など、人間としての基本的な力のこと」と説明する。
重子さん自身は子どものころ、日本で「詰め込み教育」を受けた。中学生のとき、数学の成績が落ち、勉強を投げ出してしまった苦い思い出がある。「自分はだめなんだと、ずっと自信を持てなかった。娘には、私のようになってほしくないという思いがありました」と振り返る。
小1で任せた朝食づくり 初のメニューは…
非認知能力を育むため、心掛けたのが「安全な環境」づくり。「子どもは『自分は必要とされている』と感じるからこそ、のびのびと育っていける」。考えを押しつけたり、意見を否定したりせずに、「どう思う?」「あなたならどうする?」と口癖のように質問し、スカイさんの言葉に耳を傾けた。思考力や表現力を育むとともに「自分の思っていることを言ってもいい」という自信を持ってほしかったからだ。
小学1年のころから、毎週日曜は家族3人分の朝食づくりをスカイさんに任せた。「500円ぐらいで買えるものは何か、火や包丁を使わずに作れるのはどんなメニューかなど、いろいろ考えて作っていた」と振り返る。初めて出てきたのは、レタスとイチゴ。重子さんは「どうやって、へたを取ったの?」などと尋ね、「それは発見だったね」と肯定する感想を言うようにしたという。
「結果」だけをほめていませんか?
子どもは興味のあることや好きなことなら努力し、失敗してもくじけない。そんな情熱を注げる「パッション」を応援することを常に意識した。バレエが大好きだったスカイさんに、「バレエでは食べていけない」など後ろ向きなことは言わず、親子で将来のことを話し合うと、スカイさんは「学校とバレエを両立させて頑張った」。大学生になったスカイさんは今年の夏でバレエを卒業し、「政治の世界に行きたい」と新たなパッションを持って勉強している。
日本でも、やる気や能力を引き出すために「ほめる」ことが大切だと言われる。ただ、重子さんはこう呼び掛ける。「テストで100点を取ったとき、結果だけをほめていませんか。本当にほめないといけないのは、どんな努力をしたのかという部分。それをきちんと子どもに話させて、認めてあげてほしいですね」
全米最優秀女子高生コンクールとは
時事問題に関する意見や、音楽やダンスといった特技などを発表し、大学進学を目指す女子高生たちが学力や知力、体力、コミュニケーション力、自己表現力などを競う。優秀な生徒に奨学金が贈られる。1958年から開かれており、各州と自治区の予選を勝ち上がった代表が全国大会に出場する。