認知行動療法で生徒の自己肯定感を高めよう 横浜旭陵高で出前講座

加藤文 (2024年5月7日付 東京新聞朝刊)

ワークシートに記入する生徒たちに声をかける小関俊祐准教授=横浜市旭区の県立横浜旭陵高校で

 「物事の良い面を見たり、より良い行動を選択したりできる方法を学んでみませんか?」。神奈川県立横浜旭陵高校(横浜市旭区)で、大学の先生による出前講座があり、受講を希望した生徒たちが参加した。3年後に再編統合される横浜旭陵高校。困難なことに直面しても悲観的に捉えず、生徒たちに少しでも前向きな学校生活を送ってほしいと、教職員たちは授業に「認知行動療法」を取り入れ、試行錯誤を続ける。

生活に隠れる「ちょいウキ」発見 

 4月25日、横浜旭陵高校の会議室で桜美林大の小関俊祐准教授が語りかけた。「学校でうれしい、楽しい気持ちになるのはどんな時かな?」。生徒からは「好きな先生の授業」「昼休み」といった声が上がる。

 テーマは「『ちょいウキ』を見つけよう!」。ちょいウキとは、「昨日見たテレビ番組についておしゃべりする」「学校で好きな場所を見つけて過ごす」といった、ちょっぴり楽しくなったり、うれしくなったり、ワクワクしたりすること。小関准教授は「ちょいウキはいつもの生活の中に隠れている。ストレスとうまく付き合うために、自分だけのちょいウキを見つけて、やってみることが大事」と呼びかけた。

 辻本清乃(さやの)さん(16)は「悩むことも多いけど、ちょっとしたことでも幸せなんだなと思えた」と感想を語った。

スマホとの上手な付き合い方は?

 この日は多目的室で、京都橘大の杉山智風(ちかぜ)助教の講座「スマホとの上手な付き合い方」も行われた。親に叱られたからスマホを触るのを一切やめるという考え方ではなく、やるべきことをやっていれば、ストレスなくスマホができると捉え、自分にとって気持ちが楽になる、メリットが大きい考え方とその後の行動パターンを選んでもらえたらと、杉山助教は提案した。

講座で生徒たちに語りかける京都橘大学の杉山智風(すぎやま・ちかぜ)助教=横浜市旭区の県立横浜旭陵高校で

 奥野董大(ただひろ)君(17)は「物事の捉え方は人それぞれで、違うことを知った。自分の視野が広がった」、土屋椛湖(かこ)さん(16)は「ネガティブに考えがちなので、客観的な考えで自分をポジティブに変えていけたら」と話していた。

 認知行動療法は過剰なストレスを招く考え方のくせに気づき、視野を広げて多様な見方ができるようにする心理療法。横浜旭陵高校の教員有志は一昨年、生徒たちの自己肯定感を高めたいと授業への活用を始めた。昨年からは認知行動療法に詳しい小関准教授の協力を得て検証を重ねるなど、学校全体で取り組む。今回の出前講座では、生徒が事前に小関准教授とオンラインで打ち合わせ、生徒に参加を呼びかけたという。

 再編統合のため、今年の新入生が卒業する2027年3月末で横浜旭陵高校としての幕は閉じるが、大野俊世校長は「今の生徒たちはもちろん、将来的に、教員が異動した先での生徒たちとの関わりの中で、この取り組みが芽を出してくれたら」と期待を込めた。

神奈川県立横浜旭陵高校

 2004年4月、2つの高校の再編統合により開校した。学年制ではなく単位制の高校で今年4月1日時点の生徒数は612人。2027年4月1日に旭高校との再編統合が決まっており、今年4月に入学した生徒が卒業する2027年3月末、横浜旭陵高校としては閉校となる。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年5月7日