「自分が大嫌い」な高校生たちに認知行動療法を 自己肯定感を高める独自授業 横浜旭陵高校の取り組み

加藤文 (2023年10月28日付 東京新聞朝刊)
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数人のグループに分かれ、理想の時間割を話し合う生徒たち。養護教諭の引地若菜さんが声をかける=横浜市旭区の神奈川県立横浜旭陵高校で

 「自分を否定しがちな生徒たちに自己肯定感を高めてもらいたい」。神奈川県立横浜旭陵高校(横浜市旭区)は、自分の考え方や行動のくせを知って対策をする「認知行動療法」を取り入れた独自の授業に取り組んでいる。教師たちを動かすのは、困難な事態に直面しても物事を悲観的に捉えず、少しでも前向きな学校生活を送ってほしいという願いだ。

認知行動療法とは

 過剰なストレスを招く考え方のくせに気づき、視野を広げて多様な見方ができるようにする心理療法。カウンセリングなどを通じた、うつ病や不安障害、摂食障害の治療の他、休職者の復職支援などにも取り入れられている。

「気持ちが乗らない」理由を考える

 横浜旭陵高校で26日、認知行動療法を取り入れた理科・生物の授業があった。「気持ちが乗らない日はどんな理由があるかな?」。引地若葉教諭(養護)は語りかけた。「授業で全部埋まっている」と生徒から声が上がる。

 この日の授業のテーマは「時間割の呪縛から解き放たれよう」。引地教諭と伊藤未紗教諭(理科)の分野の異なる2人が授業を進める。朝寝坊を防ぎ、授業中の眠さを解消するため、適度な睡眠や朝食を取ることの大切さを学んだ後、時間割に関し、普段の生活で気を付けた方が良い行動とその理由を生徒たちに考えてもらった。

養護教諭の引地若葉さんの説明を聞く生徒たち

 時間割は変えられなくても、夜中まで起きているといった生活習慣や食べているものに意識を向けてもらい、生徒たちに行動を変えてほしい-が、教諭らの授業の狙いだった。

 3年の市川優人(ゆうと)さん(18)は「ふだんの授業よりリラックスして聞くことができた」、3年の中川優衣(ゆい)さん(18)も「みんなで考える授業で楽しかった。授業が短く感じた」と話していた。

2022年、小中高生の自殺は過去最多

 横浜旭陵高校では昨年、教員有志が認知行動療法の授業への活用を始めた。今年からは、認知行動療法に詳しい桜美林大の小関俊祐准教授の指導を受けながら、学校全体で取り組む。授業の前後で生徒たちにアンケートをして検証し、授業内容の改善につなげていくという。

 2022年4月に着任した大野俊世校長には忘れられない出来事がある。着任後まもなく、「自分のことをどれぐらい好き?」と1年の女子生徒に尋ねると、生徒はものすごく頭を振って「大嫌いだ」と答えたという。自己肯定感を高める認知行動療法を取り入れた授業に取り組むきっかけとなった。

 横浜旭陵高校には不登校を経験した生徒や支援が必要な家庭の生徒も通う。大野校長が危惧するのは、日本の若者の自己肯定感の低さと、小中高生の自殺が増えている現状だ。2023年版自殺対策白書によると、2022年の小中高生の自殺者は514人で過去最多。このうち7割近くを高校生が占める。

 認知行動療法を取り入れた授業の実践例は少ない。大野校長は「授業を受けているだけで、いつの間にか自分に前向きになり、生きるのをやめようなんて思わなくなってくれるのでは」と期待を込める。同校は11月にも同様の授業を実践する予定だ。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2023年10月28日

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