いじめで「死にたい」と悩み、スクールカウンセラーに救われた男性が相談員になった 「話すことは放すこと。頼ってほしい」

米田怜央 (2022年11月8日付 東京新聞朝刊)
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カウンセラーに相談した過去を振り返る栗本顕さん=東京都豊島区で

 SNSに自殺願望を書き込むなどした若者が、善意を装った第三者の接触から被害に遭う事件が後を絶たない。中学時代にいじめを受けた際、スクールカウンセラーに救われた経験を持つ男性は、同じように苦しむ人を助けようと、相談を受ける側の仕事に就いた。「信頼できる人に相談することが、変わるきっかけになる。頼ってほしい」と訴える。

小中でいじめ 両親には言えず

 「きもい」「死んでほしい」。千葉県に住む栗本顕(あきら)さん(31)は、県内の私立中1年の2学期、スクールバスの座席などに残された落書きに気付いた。

 公立小時代にいじめに遭った。そこから逃げるために進んだ私立中にも「居場所がない」。食事はのどを通らず、登校すると腹痛に襲われた。両親の目を盗んで自宅の壁に頭を打ち付けた。「死にたい」と思い詰めた。

 両親をがっかりさせたくないと相談はできなかった。「いじめ」を言葉にして認めると、私立中受験の努力が無駄になりかねないとも感じた。誰が味方か分からず、友人も学校の先生も信じられなかった。

「つらいことがあったのかな」

 無理して登校を続けていたある日、スクールカウンセラーの案内がたまたま目に留まった。放課後、隠れて訪ねた相談室で女性のカウンセラーと向き合った。

 「つらいことがあったのかな」との問いかけにハッとした。つらかったと初めて認めることができた。否定や評価をしない語り口に心が軽くなり、一時間ほど泣きながら悩みを打ち明けた。「説明することでモヤモヤを整理できた。問題を解決しようと前向きになれた」

 カウンセラーに促され、両親にも胸の内を明かした。2学期の残りは登校せず、休み明けは緊張したが、怖くはなかった。「頼りになる人がいる」と信じられた。一部で続いたいじめも気にならなくなった。

憧れを抱き、心理学を学んで

 その後もカウンセラーと対話を続けるうち、憧れるようになった。「苦しんでいる時に本当に望んでいることを一緒に考えてくれた。環境ではなく、自分を変えてくれた」。大学と大学院で心理学を学び、カウンセラーの道へ進んだ。現在はNPO法人などで相談員として働いている。

 苦しむ人が周囲になかなか相談できない気持ちは分かる。だからこそ、専門機関を頼ってほしい。「話す」ことは「放す」ことだと強調する。「つらい気持ちをちゃんと受け止めてもらえて、視野を広げてくれた。だから今がある」

SNSやチャットからの相談が大幅増 専門機関もネット対応

 若者の悩み相談は、SNSやチャットを通じた案件が大幅に増えている。主に電話で相談に応じてきた専門機関もネットに間口を広げている。
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チャットで寄せられる悩みに対応する相談員=東京都内で

座間事件を受けて整備が進む

 東京都内のアパートの1室にタイピング音が鳴り続ける。今月上旬、NPO法人「しながわチャイルドライン」(品川区)の相談現場では、メンバー4人がノートパソコンに表示されるメッセージに応答していた。

 10代とみられる相談者からは、学校の人間関係や進路の悩みが次々に届く。相談員は「何が不安なの」と少しずつ解きほぐす。「電話に比べるとどうしても時間がかかるが、子どもを信じ解決を促すという根本は変わらない」。小林けさみ副代表(68)は説明する。

 全国にある18歳までの電話相談窓口「チャイルドライン」は、2016年からチャットを始めた。現在は国内68団体のうち30近くが参加し、週3、4回受け付けている。今後も拡大させるという。

 ネットでの相談体制は、2017年に神奈川県座間市でツイッターに自殺願望をほのめかすなどした9人が殺害された事件を契機に整備が進んでいる。事件後、SNS投稿者の相談に乗る目的で創設された民間資格「SNSカウンセラー」の認定者は1000人を超えた。

 国が補助する事業者への2021年度のネット相談は25万9814件で、2018年度の10倍以上。相談者の多くは20代以下だ。小林副代表は「小さな悩みも死にたい気持ちも取りこぼさないよう、人を増やして対応したい」としている。

 「チャイルドライン」の電話とチャット相談窓口はホームページで紹介されている。厚生労働省の特設サイト「まもろうよ こころ」にネットの相談窓口が紹介されている。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年11月8日

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  • キガネムシ says:

    栗本氏のような存在は、元教員として大変有り難く感じる。一方で、いじめは犯罪であるから、学校で起こっていても学校が解決に乗り出す問題ではない。双方から聞き取り調査を丁寧に行い、データを警察に提出し、委ねるべきである。専門家に任せるのが一番だ。はっきり犯罪案件にすることで抑止効果も期待できる。親が「誰かをいじめたら警察に逮捕されるぞ」と注意するのが良い。問題は管理職や教育委員会の姿勢である。誰か「(いじめは)あなたたちのせいではないから安心しろ」と言ってあげられると良いのだが。ここは文科相の出番か。

    そもそも大人の間でも陰湿ないじめはあるのだから、「あってはならない」かもしれないが人格未完成な人間が集まる学校では「あっても不思議ではない」ことである。

    キガネムシ 男性 50代

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