性加害のニュース、子どもに意味を聞かれたら? 産婦人科医からアドバイス「ごまかさずに正面から話しましょう」
【読者の悩み】日々テレビで流れるニュースを見て、息子が質問してくるので困っています。アナウンサーがしゃべるたびに、これは何、どういうこと、と聞いてきます。最近は性加害のニュースが多く、答えに困ります。正解はないかもしれませんが、どのような対応がいいのでしょうか。(愛知県・40歳)
「もしあなたがされたらどんな気持ち?」
岐阜県可児市の女性(41)は、ごまかさず、分かりやすい言葉で簡潔に伝えることを心掛けている。「相手が嫌だって言っているのに、無理やり体を触ったんだって」「お風呂に入っている様子を勝手にカメラで撮影したんだよ」などと伝え、子どもには「もしあなたがされたらどういう気持ち?」と尋ねる。
「裸の写真を勝手に撮ったり、体を触ったりするのは悪いこと。やめてほしいと思ったら、嫌だとはっきり言いなさい。言えないなら全力で逃げて、近くの大人に助けを求めなさい、と繰り返し教えています」と明かす。
「性教育ができるチャンス」と考えるのは、同市の女性(37)。陰部の肌荒れで当時小3の息子を病院に連れて行った際、「病院の先生には見せてもいい」と伝えていたが、息子は女性医師の診察が恥ずかしくて泣いてしまった。性被害ではないが、子どもの気持ちに寄り添えなかったと反省した経験があるという。
「性被害に遭った際に『これはだめなことだ』とすぐに気づけるように、そして知らず知らずのうちに加害者にならないように、性について語るいい機会ではないか」と考える。
「防災や防犯」と同じように伝えよう
性教育は、自分と他人の人権を守るため
その上で3歳ごろから伝えたいのが、水着で隠れる部分と胸、口を表す「プライベートゾーン」の存在だ。大切な場所なので他人に見せたり触らせたりしない、相手の同意なく見たり触ったりすることはあってはならない、と教える。親子の間にも境界線はあり、かわいいからと子どものおしりを触ったり、口にキスしたりするのは厳禁だという。
注意したいのは、子どもが性に関心を持つのは悪いことではないということ。親世代は学校でほとんど性教育を受けていない一方、暴力的な性描写や快楽としての性の情報があふれ、子どもに伝えることに抵抗感がある人も多い。川村さんは「『性=悪』ととらえるから口ごもってしまう。性教育は人権教育。自分と他人の人権を守るために学ぶ必要がある」と語る。
暴力的な性描写を現実と混同しないよう
「性をポジティブにとらえるところが出発点」とも指摘する。性について知ることで自分の体や心、命に関心を持つことができる。
「そのうちなんとなく分かるだろう」とうやむやにした結果、インターネットなどで男性による女性に対する支配的・暴力的な性描写にたどり着き、それが現実だと混同してしまうことも。そういったコンテンツに触れる前に事実に基づいて教育をすることで「これは現実とは異なる」と認識できるようになるという。
被害に遭ったら…「あなたは悪くない」
伝えるタイミングについては、「赤ちゃんってどこから来るの」と質問された時やドラマのベッドシーンなど、一見気まずくなりそうな場面が逆にチャンスに。「隠すことではなく教えるべきこと。『いい質問だね』と肯定し、事実を伝える。性教育に関する本をテキストとして使ってもいい」と助言する。
万一、子どもが性被害にあった場合は、「絶対にあなたは悪くない」と伝えるのが重要だという。加えて、警察に届けるなどし、泣き寝入りをしないこと。川村さんは「被害を受けたのは恥ずかしいことではない。毅然(きぜん)と対処することが大事」と力を込める。