都知事選で考えたい多摩格差 ある市長は「正直、ふざけんなと思う」 23区は給食費無償化したが…財源なく「分断が生じる」

昆野夏子、岡本太 (2024年6月30日付 東京新聞朝刊)
 東京といっても、財政が豊かな23区と、多摩地域の市町村では、住民へのサービスに差がある。「多摩格差」と呼ばれ、その一つが小中学校の給食無償化。23区は全て実現した一方、多摩地域では半数近くの自治体が実施を見送り、住民からは不満の声も漏れる。

八王子市の学校給食試食会で、子どもたちと給食を食べる初宿市長(左)=東京都八王子市で

給食無償化 30のうち14市町村だけ

 「多摩26市の間に分断と格差が生じる」。1月下旬、多摩地域の市長が集まる市長会。東京都が本年度から給食無償化の半額補助制度を始めることに、町田市の石阪丈一市長が懸念を示した。他にも同様の発言をした市長がいたという。

 無償化には億単位の恒久財源が必要となるため、財政力で劣る自治体にはハードルが高い。多摩30市町村のうち、4月時点で無償化できたのは14市町村。4市が6月議会で無償化の予算案が可決されて実施に動くが、残る12市町に具体的な予定はない。

 給食無償化が実現していないあきる野市で、中学生の娘と小学生の息子を育てる母親(44)は「不公平と思ってしまう。市も『子育てしやすい町』をうたうのに、一番ネックの経済面は助けてもらえないなんて」と不満を口にする。 

財政力の差で「多摩『内』格差」に

 中嶋博幸市長は「都が半額補助しても、毎年1億円以上の経常経費を費やすのは厳しく、慎重に考えざるを得ない。子育て支援は総合的に考えていかないといけない」と述べる。

 「『なぜ23区はできて、ここはできないのか』とプレッシャーがすごい」「無償化しないと子育てに熱心ではないと思われる」

 多摩地域の市長たちはそう漏らす。ある市の幹部は、1月時点で無償化を決めていた多摩地域の自治体を調べた。「大半は23区と接しているか、市長選があった自治体だった」

 企業や商業エリアが多く税収に恵まれている23区に比べ、多摩地域は財政力に劣る傾向がある。近年は多摩地域内でも、武蔵野市など23区隣接やJR中央線沿線を中心に財政力のある自治体が増え、それ以外の地域との差が拡大。「多摩『内』格差」へと姿を変えつつある。昨年度から都が始めた高校生医療費の無償化でも問題になった。

 都知事選(7月7日投開票)の主な候補らは、多摩格差の是正が必要との見解で一致。多摩地域での給食無償化の実現を掲げる候補もいる。

道路整備や産業振興も「金がない」

 都の元局長で今年1月に初当選した八王子市の初宿(しやけ)和夫市長は「八王子市に来て一番感じたのは財源がないこと。不安なく施策を実施していくための財源は、都にいた時の感覚からすると非常に心もとない」と打ち明ける。都道の整備の遅れも指摘し「区部と比べて人口の規模が違うが、災害時を考えると整備を進めてほしい」と訴える。

 ある市長は「正直言って、ふざけんなと思う」と怒りを隠さない。給食無償化以外にも道路整備や産業振興など、さまざまな分野で23区と差が広がっていると感じている。「こっちは金がない。職員の努力だけじゃどうにもならない」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2024年6月30日

コメント

  • 都内ですが、未だ給食費無償化されていない地域に住んでいます。 都は、無償化に踏み切った自治体に対して半額負担していますが、私の住む市ではその半額も出せないと主張しています。 不要なことがた
    まま 女性 30代 
  • 財源はどこの自治体も厳しいと思います。厳しいが、子育て世帯の負担軽減を優先しなければならないとする危機感の違いが給食費無償化か否かの差だと思います。 給食費無償化しない市町は、子育て世帯に優しく
    人財育成 男性 40代