学習障害は「やる気」のせい? 保護者が苦労した経験とは SNSでつながり情報サイト開設
支援を受けるまで2年かかった
サイトを立ち上げたメンバーの一人、東京都の宮崎舞さん(仮名)の中学1年生の次女は、「ティッシュ」など小さな「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」が入った文字の判別や、漢字を覚えるのが苦手。LDの中でも読み書きが困難な「ディスレクシア」と診断されている。しかし、当初はなかなかLDについての情報にたどり着けず、適切な支援を受けるまでに2年もかかった苦い経験がある。
「落ちこぼれますよ」。担任の教師にそう言われたのは、次女が小2だった5年ほど前だった。ノートを見ると、字はぐちゃぐちゃで、学習内容を書き留められていなかった。担任との相性の悪さを疑ったが、勉強をみるうちに「算数はできるのに、カタカナの書き取りや漢字の暗記ができていない」と、ディスレクシアを疑った。学校や病院などには「やる気」のせいにされたという。
何とか養護教諭の紹介で専門の検査を受け、ディスレクシアと分かったのは小3の2月。学校側に結果を伝えたが、理解できる教職員はいなかった。自ら交流サイト(SNS)で情報を集め、専門家からの助言を学校に提案。小4からはタブレット端末でノートを取ることが認められ、キーボード入力や板書の撮影で授業を受けやすくなった。
SNSで知り合った保護者らとは交流を続け、計4人で2023年3月にサイトを開設。相談先や学習法、保護者の体験談などを掲載している。
開設1年半でアクセス件数は月に2万件ほど。活動を支える保護者も増え、今はSNSの更新も含めて約30人で運営する。今後は全国に支援者を増やし、地域情報の充実を目指す。宮崎さんは「LDのある子どもたちが学校に楽しく通うために、いろいろな学び方を試してみて、合うものを見つけてほしい」と話している。
ICT活用がLD支援に効果
文部科学省の2022年の調査によると、公立小中学校の通常学級で「学習面で著しい困難を示す」とされ、LDの可能性がある児童生徒の割合は6.5%と推定される。
LDは、単に「学習が遅れている」「本人の努力不足」とみなされたり、子ども自身が症状を隠したりするため、周囲の大人が気付かないこともある。LDの支援に詳しい筑波大人間系の丹治敬之准教授(障害科学)は「適切な支援が受けられないと、子どもは勉強ができないと思い込んで自己肯定感が下がり、二次的な問題としてメンタルヘルスの不調につながったり、不登校になったりするケースがある」と指摘する。
一方、LDの子どもの教育支援で、効果を上げているのが情報通信技術(ICT)活用だ。文字の音声読み上げ機能や音声入力、キーボード入力を使えば、読み書きが困難な子どもの負担は軽くなる。丹治さんは「学ぶ機会や学ぶ権利を保障する支援が必要になる」と、教育現場での支援体制の充実を求める。
学習障害(LD)
全般的な知的発達に遅れはないが、聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する-といった学習に必要な基礎能力のうち、一つまたは複数を苦手とし、学習上、さまざまな困難に直面している状態。米国の俳優トム・クルーズさんや映画監督スティーブン・スピルバーグさんが自身の障害を公表している。