岡山県PTA連合会の解散は全国に波及するか 会費や動員の負担がなくなるメリット 見えにくい「ピラミッド」組織の意義
会員18万人→9800人まで減少
「会員の大幅な減少に歯止めをかけることができず、活動が継続できないと判断した」。今月2日にホームページ上で公表した声明で同連合会の神田敏和会長はこう理由を説明した。同連合会事務局によると1948年に設立され、2008年度には県内全21郡市の連合会が加盟し18万人の会員がいたが、本年度は5団体9800人まで減少。解散の決議に当たり、役員から反対の声はなかったという。
事務局担当者は「5団体まで減少した時点で、会員からは『要請や動員に対応できない』との声が上がっていた」と明かす。
連合会は広報紙の研修や県教育委員会への要望・提言、日Pなどが開催する全国大会やブロック大会に人を動員してきたという。「解散することで各PTAは上部団体へ会費を納める必要や動員の負担がなくなり、各自の活動に集中できる」と担当者。12月末で日Pからも退会するが「県組織や全国組織とのつながりがなくなったとしても、大きなデメリットにはならないのでは」とみる。
PTAは、各校単位の組織(単P)が市区町村の連合会(P連)に加盟。その上部団体の都道府県や政令市の組織が日Pを構成する。岡山の動きは、他地域にどのような影響を与えるのか。九州地方のPTA連合会の幹部は「解散の動きが波及しないか懸念はある。県内でも未加入が拡大しており、今までのような組織運営は難しくなっていくはずだ」と話す。その上で「災害時には日Pを通じて支援を受けることができた。縦や横の関係が弱くなれば学校が孤立してしまうのでは」と危機感を強める。
日P退会に反対多数の協議会も
一方で日Pを巡っては、22年度に4700万円の赤字を計上、元参与が背任容疑で逮捕、起訴される事件も発覚するなど、これまでの運営体質が問題視されている。昨年3月末に「東京都小学校PTA協議会」が日Pから退会し、千葉市やさいたま市の協議会も続いた。現在複数の連合会・協議会が退会を検討中だ。
京都市PTA連絡協議会は22年、当時会長だった大森勢津さんが日Pからの退会を提案したが反対多数で実現しなかった。大森さんは「コロナ禍を経て負担軽減など日Pに対して今後の活動の方向性についての議論を求めたがまともに取り合われなかった。全国のPTAの声を文部科学省に届けることが日Pの役割のはずだが機能していない」と退会を提案した背景を説明する。「ガバナンスや意思決定が不透明で、変化に対応できなくなっている。改善の見込みがなく、費用負担に対するリターンがないと感じた」と振り返る。
PTA問題に詳しいジャーナリストの大塚玲子さんは「上部組織の会計問題が注目を集め、改めてPTA組織に対する不要論が出ている」と話す。「特に都道府県組織は何をしているのかが見えにくい。会費を集め、上からの求めに応じるだけの存在になっていた」と岡山の解散を受け止める。さらにPTA組織のあり方についてこう強調する。「全体の構造として、必要性を考えずにただ組織ありきで活動をしてきた実態が、いま問題として顕在化している。現場の保護者や教職員のための団体に立ち返り、構造全体を見直すべきではないか」
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