「普通の家族」ってなによ?うちはお母さんが2人 同性婚を求め提訴した女性カップルの子育て
ともに男性と結婚、出産、離婚 同居するうちにだんだん…
2人は東京都世田谷区に住む、ともに40代の西川麻実さん、小野春さんのカップル。同居して約14年、それぞれの大学生と高校生の子ども計3人をともに育ててきました。
―家族になった経緯は。
麻実さん 私は若い時から家庭を築きたかったんです。女性が好きという自覚はなんとなくあったけれど、女性との結婚は社会が許してくれない。20代で男性と結婚して出産しました。相手にも伝えていましたが、やっぱり自分の大事な部分を抑え込みながら「異性愛者」として生きていくのはつらかった。離婚し、シングルマザーになりました。
春さん 私は、今はバイセクシュアル(両性愛者)だと思っていますが、結婚するまでそんな自覚はなく、20代で男性と恋愛して結婚。2人の子を出産しました。今思えば、そこまで男性に興味が持てないし「変だな」と考えていたこともありました。セクシュアリティー(性のあり方)には関係ないことでいろいろあって、その後、離婚しました。
麻実さん もともと知り合いで、1人で子育てする彼女が大変そうだったので、手伝いにいくうちに同居しました。何かきっかけがあったというより、だんだんカップルになっていった感じかな。
春さん 私は女性と付き合ったこともないし、女性同士で暮らしていくビジョンもなかった。当時は1人で育児をする文字通りの「孤育て」状態。助けてくれる彼女を「いい人だなあ」と神様みたいに思っていました。付き合おうって話が出た時に、自分はバイセクシュアルだと意識したかな。一緒に暮らしてみたら、すごいリラックスできた。
「結婚式をする」と子どもたちにカミングアウト「罰せられる?」
―2人にはそれぞれ子どもがいました。お子さんたちにはどう伝えたのでしょう。
春さん 同居当時は、子どもたちはまだ小さくて特に説明しませんでした。隠すわけでもなく、「ママの一番好きな人は?」と聞かれたら彼女のことを答えていました。
麻実さん 同居して5年ぐらいたった2010年、都内で結婚式を挙げました。子どもたちに正式にカミングアウト(打ち明けること)をしたのはその時。「結婚式をする」と伝えたら、一番上の子は「日本では同性同士は結婚できるのか」「罰せられるのでは」と聞いてきましたね。私は、日本では同性婚は想定されていないだけで禁じられていないと考えていること、同性婚ができる国もたくさんあること、同性で結婚できないのは差別の問題だと思っていることを話し、「結婚式は一つのアクションなんだよ」と言ったら、「そっか」と納得してくれました。子どもたちもいろいろ考えたと思います。
―同性同士で良かったことは?
麻実さん たくさんありますよ。家事や仕事も、お互いが得意分野や忙しさに応じて「ごはんつくるよ」「洗濯やっとくね」という感じ。最近は雰囲気で分かるから、忙しい時は全部やってもらえる。男女の性別役割分担にとらわれることもないし、結婚という「パッケージ」に安住することなく、お互いの関係性を丁寧に築けますよね。
春さん 女性と一緒に暮らしてみて、自分にも性別役割分担の意識が染みついていたんだと気づきました。
反抗期「普通が良かった」けど「これでうちは家族なんだよね」
―同性カップルで子育てしてきた中で、大変だったこともあったと思います。
春さん 子どもが入院した時に、実親でないと手続きできなかったことかな。ただでさえ、大変な時に「血縁関係」と言われて、落ち込みました。
麻実さん あの時は急を要する病状ではなかったから良かったけれど、命に関わる時だったらと思うと怒りさえ覚えました。
春さん 子どもが反抗期の時、「普通が良かった」と言われたこともありました。「とうとう言われたか…」と思ったと同時に、「普通ってなによ?」という気持ちもしたし、子どもに苦労させたのかなとも思った。
また、別の時には子どもが何かにイライラして「親でもないくせに!」と彼女(麻実さん)に言ったんです。私は心の中で「そのことだけは言わないで…」って思ったんだけど、彼女は即座に「親でもないのにこんなに(真剣に向き合って)やってるんだから、感謝しろ!」と言い返していてビックリしましたね。子どもも「確かに…」って思ったのか、黙っていました。そんなことを言っていた子どもたちも、しばらくしてから「これでうちは家族なんだよね」って話していました。
法律上は2世帯同居 相続にも親権にも壁…存在を認めてほしい
―今回、同性婚訴訟に加わった思いを教えてください。
麻実さん 私たちは一緒に生活し、子どもも育ててきて、2015年に始まった世田谷区の「同性パートナーシップ」宣誓もしました。だけど、法律上は2世帯が同じ家に住んでいるにすぎない。子どもたちが偏見にさらされたら困ると思って、近所や職場でも親しい人以外には「友人」とか「親戚」と説明してきました。
でも、同性カップルに結婚という道が閉ざされているのは問題なのでは、と思うようになりました。
春さん 最初は訴訟なんてするつもりはなくて。でも、2年半前に乳がんの手術をして、元気な時は大丈夫だと思っていたことがそうではないと感じました。例えば、病気になって私が先に死んでも、彼女に配偶者として相続もできないし、共同で親権も持てないのがつらかった。
すでに私たちのように同性同士などLGBTで子育てをしている家族もたくさんいます。ただ、偏見などがあって子どものことを考えて出られないだけ。私たちは子どもも大きくなったし、「LGBT には子どもがいない」といったようなことを言われ、これ以上存在をないものにされるのは嫌だなと思ったんです。
同性婚は特別だと思われるけど、私たちにとっては「普通」
春さん 今回初めて顔を出すので、本音を言えば怖い部分もあります。同性婚というと特別のことを想像されることが多いけど、自分たちにとっては「普通」。子どもたちも「LGBTとか言うけど、自分にとっては普通の家族」「親が同性ってだけだよね」と言ってくれています。きょうだい仲良くて、ソファで3人一緒に、だんごみたいに丸まってゲームをしている姿を見ると幸せだなあって思います。
麻実さん 子どもたちに訴訟のことを話したら、軽い感じで「応援してるよ」「頑張って」と言ってくれました。私は家族を持ちたいと思って、いろいろ苦しいこともあったから、そんな苦しみを次の世代には感じてほしくないですね。
春さん 今回の訴訟は「結婚の自由をすべての人に」と掲げています。結婚したい人がする自由と、同時にしなくてもいい自由があるという姿勢がふに落ちました。個人の思いが尊重される世の中になってほしいと思います。
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小野春さんは、子どもを養育するLGBTファミリーの団体「にじいろかぞく」代表。エンタメサイト「ベビモフ」で、子育てエッセイ「80%ふつうのいえ」を連載しています。
インタビューを終えて
「うちらにとってはこれが普通だからね」「うん、自然だよね」
取材時、「2人のお母さん」について子どもたちに聞くと、こんな答えが返ってきた。自然体の答えに、私自身もどこか「普通」の家族という基準を持ちながら質問したような気がして、ドキッとさせられた。「そうだよね、14年も家族として過ごしてきたんだから」。独り言のようにつぶやいた。
西川さんが「本当はもっと友達を家に連れてきたかったでしょう?」と言うと、子どもたちは「いや、別に」。親を気遣うようなそんなやりとりもほほえましかった。他愛もない話で笑いあい、時に怒ったり、泣いたり…。目の前にたしかにある家族を見て、小野さんがインタビューで話してくれたように「普通ってなによ?」と思った。
それでも、2人が同性婚を求める訴訟に加わるのは、勇気や覚悟が必要だったと思う。結婚とは、家族とは。そんなことを考えながら、すでにこの日本に存在する、同性カップルやその家族が堂々と生きていけるようにと思う。
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