仕事と家庭の両立?そんなうまい話があるかいな 〈新連載 お父ちゃんやってます!加瀬健太郎〉
(2020年7月3日付 東京新聞朝刊)
今月から第1金曜日は、写真家の加瀬健太郎さんが3人の息子たちとの日々を写真とエッセーでつづる「お父ちゃんやってます!」をお届けします。加瀬さんは「子育てってこれぐらいでいいんだ、と思ってもらえるような写真と文で、息抜きしてもらえたら」と話しています。
「ステイホーム」という言葉が、巷(ちまた)をにぎわせるずっと前から僕は「ステイホーム」してきました。売れっ子とは言い難いフリーランスのカメラマン。もちろん事務所なんかありません。なので自動的に、というわけです。
うちは3兄弟と嫁さんと僕の5人家族。3兄弟だと言うと、みんな「お気の毒に」と言う代わりに、半笑いで「にぎやかでしょう?」と言ってくれます。はい、にぎやかです。とても。
「テレワーク」を始めた人に「どうしたら仕事と家庭のメリハリをつけられるか」と聞かれます。僕のアドバイスは、「そんなうまい話があるかいな」です。パソコンに向かっていると「へー、そういうのしてんだ」と息子の友達がしたり顔でのぞき込んでくるし、部屋を歩けば、転がったレゴで足の裏をけがするか、米粒が靴下に張り付いて剥がれません。今も仕事部屋では、カニが、背後でカサコソと音を立てています。
もう諦めました。「仕事」と「家庭」には、はっきり境界線があるわけではなくて、終わりかけの「アクアフレッシュ」のようにぐちゃぐちゃに混ざっているものだと。9月には4人目が誕生します。また男です。これからよろしくお願いします。
加瀬健太郎(かせ・けんたろう)
写真家。1974年、大阪生まれ。東京の写真スタジオで勤務の後、ロンドンの専門学校で写真を学ぶ。現在は東京を拠点にフリーランスで活動。著書に「スンギ少年のダイエット日記」「お父さん、だいじょうぶ?日記」(リトルモア)「ぐうたらとけちとぷー」(偕成社)など。10歳、7歳、3歳の3兄弟の父。これまでの仕事や作品は公式サイトで紹介している。
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