夫婦別姓は子どもがかわいそう? 当事者から「的外れ」と反論 座談会で偏見の解消を訴える
両親が事実婚「家族の一体感があり幸せ」
制度の法制化をめざす市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が6月下旬、東京都内で開いた座談会。事実婚などで両親の姓が違う家庭で育った小学4年から20代の社会人まで6人が、オンラインを含めて登壇した。
夫婦別姓に反対している人たちの中には、夫婦がそれぞれ生来の姓を選べるようになると、「子どもがいじめられ、かわいそう」「子どもが健全に育たない」との主張がある。
しかし、登壇者はいずれも「そうは思わない」と否定。共働きで事実婚の両親がいる弁護士の日高稔基(としき)さん(25)=東京都=は「いじめられた経験もない。的外れ」と指摘。同じく両親が事実婚の銀行員、松浦将也さん(24)=東京都=も「同じ空間で生活し、家族の一体感があった。幸せな人生」と話した。
当たり前すぎて意識したことがなかった
親が別姓で不便なことも「ない」と口をそろえた。長野県上田市からオンラインで参加した大学一年の小池真実さん(19)は、放送部員だった高校生の時、事実婚期間が長かった両親を取材したドキュメンタリー「うちって変ですか?」を制作。NHK杯全国高校放送コンテストで入選した。
親の別姓は当たり前すぎて、制作まで「親が夫婦別姓と意識したことがなかった」と小池さん。映像制作の過程で「親が別姓だとかわいそう」との意見があるのを知り、「普通に仲のいい家族なのに、なぜ他人が決めつけるのか」とショックだったという。
参加した国会議員「世論は変わってきた」
国際結婚による別姓家庭で育った新聞記者の女性(28)は今年3月、選択的夫婦別姓制度を求める請願を審議中の愛媛県議会で、自民党県議が「選択的夫婦別姓で、より犯罪が増える」との趣旨の発言をしたことを契機に取材。「反対派は『当事者の声を聞いたことがない』『周りにそういう人がいない』という理由で反対している。当事者の声を聞くことが偏見を解消していく手段」と指摘した。
事実婚の場合、夫婦間に相続関係が認められず、配偶者控除も受けられない。親権は父母の一方のみだ。このため、登壇者の多くは「選択的夫婦別姓制度が導入されたら、両親に法的に結婚してほしい」と願った。
座談会には、与野党の国会議員14人もオンラインなどで意見を交わした。参加議員からは「(導入に慎重な)自民党の中でも個人的に理解を示す議員は多い」「世論の潮目は変わってきている」などの声が上がった。
選択的夫婦別姓を巡る世論
内閣府が2017年に18歳以上の男女5000人に実施した調査(回収率59%)によれば、選択的夫婦別姓を導入する法改正について、賛成は42.5%で、反対の29.3%を大きく上回った。年代別では10~50代は5割が賛成だが、70代以上は逆に反対が5割を占め、世代間の違いが出ている。全国陳情アクションによると、選択的夫婦別姓の導入を求める意見書や請願が名古屋市や神奈川県など全国129の議会で可決された(7月現在)。日本では夫婦の96%が夫の姓に変えている。夫婦同姓が法律婚の成立要件になっている国は日本以外にない。