僕のママは、痛い注射もいっぱい頑張ったんだ〈清水健さんの子育て日記〉29

(2021年2月19日付 東京新聞朝刊)

僕たちは元気です!

友だちに写真を見せて「僕のママだよ」

 「僕のママだよ! 痛い注射もいっぱい頑張ったんだ!」。家に遊びに来て、部屋に飾っているママの写真をじっと見ていたお友だちに、ママのことを説明していました。少しドキドキしながらも「僕のママ」と自慢するように話す息子の姿は、大丈夫かなと心配するパパの気持ちを笑顔にしてくれます。

 2月は妻の七回忌でした。

 あの時、生後3カ月だった息子。荷物の整理をしても、当時のままにしておくものがまだある。部屋のレイアウトを変えるとき、まず妻の場所を決める。息子のことや仕事のことで悩んだとき、どうしたらいい?と写真の前で座り込むときもある。変わるものと変わらないもの。6年が過ぎても、こんなもんです。でも、「いない」ことの現実を今、はっきりと受け止めることもできています。

元気です 僕たちがいる「こちら」側

 お花を送ってくれた妻のお友だちが「こちらは、みんな元気で頑張っていますよ!」と、妻にメッセージをくれました。「こちら」、今、僕たちがいる、こちら側。みんな元気です。笑っています。笑えています。

 息子とは、野球のセーフかアウトかでムキになってけんかもする。仕事が続いてなかなか休みがとれないと、「明日はパパ、お仕事、お休み?」と小さな声で遠慮しながら聞いてくる。「うん」って答えると、「やったー!」って喜んで、次の朝、6時から、公園で走り回れている。

ママのことをふたりで話せた、七回忌

 「ママは、キレイなお花がいっぱいのところにいるんだね!」。法要での住職さんの話をうれしそうに話す息子。「会いたい?」。そんな当たり前の、でも、今まであまり話したことがなかったこともふたりで話せた七回忌。「ママ」のことに真正面から向き合う時は、まだまだ、これから、なんだと思う。でも、「ママは優しかった?」と、ママという言葉を、少しずつ、笑顔で、息子と交わせるようにもなってきました。

 この間、息子の初デートに付き添いました。自分のデートより緊張してヘトヘトになったけど(笑)。息子は手を合わせてうれしそうに、「今日は楽しかったよ!」と写真のママに報告していました。

 強く見えても寂しい思いもあるかもしれない。そんな息子の心を一番にわかってあげられる父親でいたい。そして、写真の中のママだけど、いつもの「日常」を、ふたりで笑って話しかけられる、そんな親子でいたい。

 七回忌を無事、おえました。 (フリーアナウンサー)

コメント

  • 私の主人も亡くなりました。 第二子を授かりこれから、夫婦ともに頑張って新たな命、新たな親になろうとしている時に癌が見つかりました。膵臓癌、ステージ4。呆気なくこれからという時に、息子の顔も産声も温か
     
  • もう涙涙で読めませんでした。ママの事は覚えて居ないだろうけどお友達にも僕のママだよって紹介できるぐらい心も成長されたんですね☺️これからはまだまだ楽しい事もパパと作って行って下さいね🎵