男性の3割を「主(体的な)夫」にしよう!”秘密結社 主夫の友”の奥深い野望

「主夫の友アワード2018」表彰式に出席した(右から)山口祥義知事、高田延彦さん、劔樹人さん、漫画「極主夫道」編集担当の皆さん(「秘密結社 主夫の友」提供)

◇「主夫の友アワード」決定…今年の受賞者は?
 2020年までに男性の3割を「主夫」に-。そんな目標を掲げて活動する団体があります。家事や育児を主体的にする男性でつくる「秘密結社 主夫の友」。毎年、主夫を広く知ってもらったり、男性の家事・育児参画を促したりした著名人を「主夫の友アワード」として表彰していますが、2018年の受賞者が今月発表されました。広報担当で自らも「兼業主夫」の杉山ジョージさん(41)に、表彰式の様子や活動への思いを聞きました。

-「秘密結社 主夫の友」とは、どんな団体ですか? 

 父親の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」のメンバーで2014年10月10日に結成しました。私たちが定義する主夫は「主体的に家事や育児をする夫」。収入や家事の分担量ではなく、姿勢で捉えています。語呂合わせから、10月10日を「いい夫(1=イイ、010=おっと)の日」と定め、3年前から主夫の友アワードを贈っています。

 メンバーは今、全国に70人ぐらい。講演やイベント出展などもして活動をPR。男性が家事や育児をするのに適した作業着がほしいとの声も上がり、メンバーが企画した「パパのツナギ」も販売し、好評です。

-今年の「主夫の友アワード」受賞者の顔ぶれは? 

 行政部門は佐賀県の山口祥義(よしのり)知事、インターナショナル部門はディズニー/ピクサーの最新映画「インクレディブル・ファミリー」、主夫部門に漫画家・兼業主夫でコミックエッセー「今日も妻のくつ下は、片方ない。」の著者、劔樹人(つるぎ・みきと)さん、作品部門に漫画「極主夫道」を選び、表彰しました。

 山口知事は自らも育休の取得経験があり、子育て家庭をバックアップする施策に取り組んでいます。映画「インクレディブル・ファミリー」は、ヒーローでありながら妻のために家事育児を引き受け主夫になる決断をした主人公の苦悩と葛藤を描いています。劔さんは、コラムニスト・コメンテーターとして活躍する妻、犬山紙子さんを支えるため、兼業主夫になりました。漫画「極主夫道」は、妻のために極道から主夫に転身した主人公の日常を描き、話題になっています。最近は、映画や漫画などで自然に主夫が描かれるようになってきたと感じます。

-表彰式ではどんなことが話題になりましたか。

 山口知事、劔さんのほか、映画「インクレディブル・ファミリー」の日本語吹き替え版で声を担当した元プロレスラーの高田延彦さん、「極主夫道」の編集担当者が出席してくれました。

 主夫の友メンバーが考えた「夫婦円満センター試験」というものがあるのですが、そこから「妻が『私のどこが好き?』と聞いてきたらどう答える?」という問題を出題しました。すると、出席者全員が「うちの妻は言わない」と。主夫の友メンバーもそうでした。主夫の周りには「女性らしく」とか、「女性は家庭」と社会的な性別役割にとらわれない女性が多いからだと感じました。

「主夫の友アワード2018」表彰式で「パパのツナギ」を着て話す杉山ジョージさん(「秘密結社 主夫の友」提供)

-ところで、なぜ「3割を主夫に」と掲げているのですか?

 政府は2020年に女性管理職を3割に、という目標を掲げています。ならば、男性の3割を主夫にしようと。女性活躍を推進することと、男性が育児家事に関わることを同時にやらないといけない。でないと、女性ばかりに負担が増えます。

-でも、主夫が増えても、性別役割分業(夫は仕事、妻は家庭)が反対になるだけでは?

 主夫に収入や育児・家事量は関係ないと考えています。平日はサラリーマンで、ほとんど家事育児を妻に任せていても、週末に「何やればいい?」ではなくて、自分で気づき、何が必要かを自分で考えて動ければいい。主体的に家事育児をする人を増やしたいと思います。

 講演などでよく「どうやったら夫に家事をさせることができますか?」と聞かれるんですが、「させる」というスタンスだと、難しいと思います。うちの妻は家のことをほとんどやりませんでしたが、相手が動くポイントは何かを考え、できる限り具体的にやってほしい家事とメリットを伝えました。彼女も納得し、今は朝ご飯と子どもの弁当作り、洗濯を担当しています。

 あまり相手をコントロールしようとしないこと。パートナーのことをどれだけ見ているか、です。やらない理由や何を考えているかが分かったら、変わるきっかけを伝える。その人が育ってきた環境や価値観は変えようと思っても変えられませんが、その人のままでやれることはあるはず。相手を尊重することが大事です。

-2020年まであと2年を切りました。今後の抱負は。

 主夫の友に寄せられる相談は、以前は子育てについてが多かったのですが、今は夫婦のコミュニケ-ションのことが多くなりました。僕が主夫になって良かったと思うのは、家族を楽しめる環境ができたこと。家事や育児があるために仕事ができず、時にストレスや不満もあるけれど、僕の場合は逆に仕事で出張が続くと、家族にご飯を作れないストレスも出てきます。夫婦でいること、家族を楽しめる主夫がもっと増えればいいなと思います。