俳優 貫地谷しほりさん 祖母は愉快な知恵袋 大切なことをたくさん教わった

五十住和樹 (2023年6月11日付 東京新聞朝刊)

祖母や曽祖母の思い出を話す貫地谷しほりさん(内山田正夫撮影)

いじめっ子に「出てこい!」

 両親が共働きだったので、私は学校から帰ったら母方のおばあちゃんちで晩ご飯を食べさせてもらいました。下町育ちで面白い人。小さいサイズのジーパンに無理やりジャンプしながら足を通していく。目が合うと「見たな~」といつも笑っている人です。洋服の話も好きな男の子の話も、おばあちゃんに相談してました。その時起こったことなどを話したと思いますが、すごく楽しんで聞いてくれた。

 学童保育にいじめっ子がいるって言ったら、おばあちゃんが入り口でその男の子の名を呼んで「出てこい!」って。でも、その後は会うたびにその子に声をかけて、時にはお小遣いを渡してたらしい。下町の感覚なんですかね。

 とにかくいろんなところに連れて行ってくれました。毎年冬のバス旅行で、時には私の同級生も一緒に。旅行会社の企画旅行のようで、知らない人たちと大きなお座敷で夕食を食べたりしました。大きな犬が苦手のおばあちゃんが鳴き声に驚いて転んで足にけがをして、新幹線で一緒に帰った思い出もあります。

認知症でもユーモアは健在

 今思うと、大切なことをたくさん教えてもらいました。例えば「ありがとうは3回言う」。やってもらった時に「ありがとう」。バイバイするときに「ありがとう」。次に会った時に「ありがとう」と言いなさいって。

 料理が上手な人で、外で食べた料理を家で再現してみせる。お豆腐の会席料理など、いろんなおいしい料理を食べさせてくれました。ある時、カビが生えた餅を「食べられない」って言ったら、「大丈夫。それぐらいなら。戦時中はカビだなんて言ってられなかったのよ」。

 そんなおばあちゃんは今、88歳。認知症もあり母の介護を受けていますが、どんな時もユーモアを失わない。最近も母のお友だちが来た時に、嫌なことをさりげなくかわす知恵をたっぷり伝えてました。実家に帰った時は、私も介助を手伝います。おばあちゃんは、足が悪かったひいおばあちゃんの介護を亡くなるまでしていました。私はちょうど思春期で、ひいおばあちゃんにどう接していいか分からない時期もあって。もっと優しくしてあげたかったな。

 認知症は年を取ればいつかはなるかもしれないと思いますが、今回出演した映画「オレンジ・ランプ」は若年性認知症と診断された夫と家族の物語。まだまだ働けるっていう時期にどうして、と本人はもちろん家族もつらい。映画では、本人が「こう生きたい」って思うものを尊重して開けていく人間関係がすてきなんです。私も頭を柔らかくして、こうありたいと思います。

貫地谷しほり(かんじや・しほり)

 1985年、東京都出身。2002年に映画デビュー。2007年にNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」で初主演。舞台や声優も含め幅広く活躍している。6月30日に全国公開予定の映画「オレンジ・ランプ」に出演する。