子どもの脳はどう育つ?(4)情報伝達の道 エネルギー節約のため整理してしまう
滝靖之(東北大加齢医学研究所教授) (2018年4月4日付 東京新聞朝刊)
皆さん、こんにちは。前回は脳の発達という観点から、私たちの脳は、生まれてから多くの道を作りますが、途中からは一部の道は壊してしまう、というお話をしました。では、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。
私たちの脳では、生まれてからほとんどの領域で、神経細胞の数は増えず、減る一方です。代わりに、神経細胞同士を結ぶネットワーク、つまり神経細胞同士を結ぶ道が増えてきます。
道を増やす理由は、いかなる環境下にも適応できる力を得るためだといわれています。確かに、脳の中の道が多い方が環境適応能力は高いと思いますよね。
ところが、道が増えすぎると問題も起きます。それは、道を維持するための維持費がかかることです。少し難しい話になりますが、神経細胞は情報伝達をするために、「膜電位」という細胞の内と外との電位差を利用しています。この電位の差を維持するためにエネルギーを消費します。道が多いほど、エネルギーも必要になる、というわけです。
そのため、数多く作られた道は、ある時期に達するとエネルギーの効率化から整理されていきます。つまり、よく使う道を高速道路に変え(髄鞘(ずいしょう)化といいます)、使わない道を壊すという現象が起きるのです。
脳の発達には、もうひとつ興味深いことが分かっています。それは、「道の作成と整理」という現象が、脳の全ての領域で同時に起きるのではなく、発達の段階で、場所を変えて順番に起きるということです。
つまり、脳の領域によって発達のピークとなる年齢が異なっているということです。これはどのような生物学的意味があるのでしょうか。この続きは、次回お話ししますね