子どもの脳はどう育つ?(6)コミュニケーション能力 伸びる思春期
滝靖之(東北大加齢医学研究所教授) (2018年5月2日付 東京新聞朝刊)
皆さん、こんにちは。前回は生まれてから10歳ごろまでの脳の発達の様子を簡単にお話ししました。今回はその後、脳のどの部分が発達するかをお話しします。
脳の中で最後に発達のピークを迎える領域は前頭葉、特に前頭葉の前の方の前頭前野といわれています。前頭前野というのは脳の中でも特に重要な領域です。具体的には、物事を考える、判断する、創造する、あるいはコミュニケーションを行うなど、高次認知機能といわれている、人間らしさをつかさどる領域です。
では、思春期に特に意識して行うことが重要と考えられている行為とは何でしょうか。その一つは、実際の人と人とのコミュニケーションです。コミュニケーションとは、単に言葉だけで行うものではなく、話し手の表情、しぐさ、声色など、多くの付随する情報を含んでいます。
聞き手は言葉だけでなく、これらの情報を総合して、話し手の気持ちを理解する-。こうした過程を繰り返すことで意思の伝達は成立します。つまり、コミュニケーション能力を伸ばすには、実際に顔を合わせた言葉やしぐさのやりとりが重要なのです。
最近、コミュニケーション能力に関わる興味深い研究が海外で発表されました。それは「共感性」と呼ばれる、相手の感情を理解し共有する能力が、この20年でどんどん下がっているというものです。
原因ははっきりしないものの、インターネットの普及に伴い、直接的な言葉や身体表現のやりとりから、ネット上での意思伝達が増えたことで、相手の気持ちの理解が難しくなっていることが原因ともいわれています。思春期こそ、家族、友達とのコミュニケーションを大切にしたいですね。