子どもの脳はどう育つ?(9)会話を重ね 相手の気持ち理解できる子に
滝靖之(東北大加齢医学研究所教授) (2018年6月13日付 東京新聞朝刊)
皆さん、こんにちは。前回は、子どもの脳の発達に重要な生活習慣についてお話ししました。今回は、子どもたちの「共感性」に関してお話ししたいと思います。
共感性とは、相手の喜怒哀楽などの感情を自分のことのように理解できる能力です。相手の気持ちを理解する上で重要な能力で、社会性、コミュニケーションの発達に密接に関わり合っていると考えられます。
共感性は、多くの人たちと直接会話することで育まれます。脳内でコミュニケーションに関わる領域を「前頭葉」といいます。前頭葉は脳全体の発達過程で最も遅く成熟します。前頭葉の中でも、特に意思疎通で重要な役割を果たす「前頭前野」は、思春期近くに発達のピークを迎えます。
ですから、小中学生の時に、家族、友人など多くの人々とコミュニケーションの機会を持つことは大変重要なのです。直接会話を積み重ねていくことが、共感性という、相手の気持ちを理解する能力の向上につながっていくのです。
最近、若者の共感する力が年々低下している、という気になる研究結果が出ました。具体的には、全く同じ共感性のテストを大学の新入生に毎年行ったところ、能力を示す数値の低下が明らかに見られたのです。
原因は分かっていませんが、一つにはスマートフォンなどによる会員制交流サイト(SNS)の普及があるといわれています。
SNSの発達により、コミュニケーションはスマートフォンなどを用いた文字情報が中心になりました。直接会話することが減ったことで、共感性を伸ばす機会が失われている可能性が示唆されているのです。できるだけ多くの人と会話して、共感する力を伸ばしたいですね。
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