インフル?コロナ?まず電話 新しい受診の流れを知っておこう よく似た初期症状…同時流行を避けるために

植木創太 (2020年10月20日付 東京新聞朝刊)

コロナの相談窓口が保健所から医療機関に変更

 国は10月中に、新型コロナウイルス感染が疑われる人の相談窓口を、保健所から地域の医療機関に変更する。コロナと症状が似ているインフルエンザの流行も予想される中、今のままでは相談体制がパンクしかねないためだ。しかし、受け入れ先となる医療機関からは負担の大きさを訴える声も。現場の混乱を避けるには、ワクチン接種をはじめインフルを予防することが大事だ。

発熱、せき、倦怠感 医師でも判別困難

 新型コロナウイルスの初期症状は発熱やせき、喉の痛み、倦怠(けんたい)感など。いずれもインフルエンザの症状とよく似ている。愛知医科大の三鴨広繁教授(感染症学)によると、よく言われるにおいや味を感じられなくなる症状が出るのも、感染者の2〜9割と研究によって幅がある。

 一方、2つの感染症への理解を促そうと日本感染症学会が8月に示した提言書などは、インフルエンザの特徴として38度を超える高熱が突然出る例が多いことを挙げた。ただ、予防接種を毎年受けるなどすれば、熱がそれほど上がらないケースも。加えて、コロナでも急に高熱が出る例が確認されており、三鴨さんは「医師でも症状だけで見分けるのは難しい」と話す。

最寄りの医療機関で検査できないなら? 

 発熱など新型コロナ感染の疑いがある人が受診する際の新たな流れでは、まずはかかりつけ医に電話で相談。そこがコロナとインフルエンザ両方に対応できるなら診療や検査を行い、難しいなら対応できる医療機関を紹介する(上の図を参照)。政府は、対応可能な医療機関を都道府県が指定するよう求めている。施設名を公表するかは自治体が地域の医師会などと協議し、判断する。

 例えば、いち早く14日から運用を始めた岐阜県では、全医療機関の4分の1に当たる423施設を指定。そのうち名前の公表に応じたのは19日現在、約90件にとどまる。院内感染や風評被害など受け入れで生じるリスクへの不安はそれほど大きい。

医療機関のためにも、11月中の接種を

 「熱があれば医師は例年より慎重にならざるを得ない」と、名古屋市医師会感染症対策理事の森亮太さん(50)は話す。コロナか、インフルエンザか。確定診断には検査が必要だ。しかし、鼻などから検体を採る際、医療従事者はウイルスにさらされる恐れがあり、フェースシールドや手袋などの感染対策が欠かせない。患者の動線確保も求められる。

 厚生労働省によると、国内では例年、推定約1000万人がインフルに感染。コロナと同時に流行すれば受け入れ先の施設の負担は増す。だからこそ「インフルエンザの予防接種を受けることが大事」と三鴨さんは訴える。国は今季、前季より1割多い6300万人分のワクチン供給を見込む。

 接種は1日から各医療機関で始まったが、重症化しやすい高齢者らが優先。26日からは、それ以外の人にも呼び掛けられる。例年12月ごろから流行が始まるため、11月中に打っておくのが望ましい。三鴨さんによると、接種すれば感染しないものではないが、発熱や喉の痛みといった症状を抑える一定の効果がある。軽症で済む場合も多くなるという。

熱が出てしまった時の受診エチケット

 インフルエンザ予防には、コロナと同じように手洗いやマスク着用も有効だ。日本の夏に流行のピークが来る南半球では今年、インフルエンザの感染者が激減。世界保健機関(WHO)も「インフルエンザ流行は認められなかった」という報告を公表した。コロナ流行で感染対策が浸透した影響とみられる。

 「予防を徹底しても熱が出るなどしたら、突然受診しない、待合室ではマスクを着けるといった受診エチケットを心掛けて」と三鴨さん。密を避け、最低限の人数で行くことも大事だ。「それがインフルエンザ、コロナ両方の感染拡大を防ぎ、医療崩壊を防ぐことになる」

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年10月20日