コロナ禍で小児科が減ってしまう 感染を恐れて外来患者が激減、経営難で閉院… 地域医療のインフラ崩壊危機

藤川大樹 (2020年9月19日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 厚生労働省はインフルエンザワクチン接種で高齢者を優先し、子どもの接種時期を遅らせるよう求めているが、小児科医は例年通りの運用を呼び掛ける。子どもがインフルエンザに感染すると、重症化の可能性があるからだ。コロナ禍での子どもの医療を巡っては、新型コロナウイルス感染を恐れ、予防接種や定期健診を控える問題も発生。小児科の診療所への外来患者の足が遠のき、経営環境の悪化も深刻な状況になっている。

「予防接種の際、感染してしまうのでは」

 「予防接種の際、コロナに感染してしまうのではないか、という心配はありますね」。JR有楽町駅前で、生後4カ月の男児を抱いた東京都江東区の会社員女性(35)が不安を漏らした。

 生後2カ月から、乳児の定期接種が始まる。小児の予防接種は感染リスクやワクチン効果、安全性を考慮して接種スケジュールが決められている。ところが小児科医らでつくるNPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」によると、2月以降、小児用肺炎球菌やロタウイルスなど小児の予防接種率は低下。特に緊急事態宣言が出た期間は大きく減った。

春からずっと予防接種しないままの子も

 「すがやこどもクリニック」(板橋区)院長で、守ろうの会の菅谷明則理事長は「予防接種率は回復してきた印象がある」という。接種の重要性が何度も報道されたことなどが影響したようだ。

 それでも今春に接種をせず、そのままになっている子どももいる。菅谷氏はインフルエンザワクチン接種時、予防接種の漏れがあれば接種を勧めるつもりだ。

一斉休校で「がた減り」そのまま戻らず

 小児科の受診控えは深刻だ。日本小児科医会長の神川晃医師が院長を務める「神川小児科クリニック」(東京都大田区)は、外来患者が半分以下になっている。

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小児医療の危機を訴える日本小児科医会の神川晃会長=18日、東京都大田区で

 手洗いやマスク効果もあるが、感染を恐れて受診をしない影響もある。「一斉休校の時はがた減りだった」。緊急事態宣言中だった5月の外来患者は前年同月比で69%減。6月(58%減)、7月(50%減)と患者は戻らない。

厚労省に要望「遠隔相談も診療扱いに」

 小児科医会が小児科診療所を対象に行った医業経営実態調査によると、前年同月比で外来患者が30%以上減少した診療所(アンケートに383施設が回答)は、5月は約7割だった。8月も回復の兆しはなく、閉院する診療所も出始めているという。

 小児科医会は15日、「小児地域医療を崩壊から守るための国に向けた緊急要望」を厚労省に出した。小児科のかかりつけ医が電話やメールで、新型コロナの不安を抱える親子の相談に乗る「子どもの遠隔健康相談」を診療として認めたり、子どもの診療報酬を増額したりするよう求めている。

 神川氏は「このままでは、地域医療を支える小児科医というインフラが消えてしまう」と訴える。小児救急や乳幼児健診など、地域の医療保険行政が回らなくなる恐れもある。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年9月18日

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