コロナ禍の学校に必要なことは?「自分の居場所じゃない」と感じる子が増えないために 子ども相談室「モモの部屋」内田良子さん

(2020年8月28日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 多くの地域で例年より短くなった夏休みが終わった。新学期も、新型コロナウイルス対策をしながらの学校生活が続く。東京・杉並で長年、不登校の子や親の相談会を開き、学校の問題を指摘してきた心理カウンセラーの内田良子さん(77)に、コロナ禍の学校のあり方について考えを聞いた。 
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「子どもたちの楽しみを奪わない学校であってほしい」と話す内田良子さん=東京都杉並区で(本人提供)

「~してはだめ」ばかりの窮屈な学校生活 楽しみをつくってあげて 

 3カ月余りの一斉長期休校の間や、学校再開後もさまざまな親子の話に耳を傾けてきた内田さん。今、心配するのは、学校を自分の居場所だと思えなくなる子が今後増えていくことだ。

 感染防止対策のため、子ども同士が近距離で触れ合えず、「〜してはだめ」の多い窮屈な学校生活。「学校が楽しいと感じてきた子でも、休み時間を自由に過ごせない、先生が怒りっぽいといった状況ではストレスはたまっていく」と憂慮する。

 「朝の8時すぎから午後3時、4時まで、子どもたちが長い時間を過ごすのが学校。生活の場としての過ごしやすさも大切。各学校は『ここだけは奪わない』という楽しみをなるべくつくってあげてほしい」

「今しかできない学び」…事実を知り、納得することが子どもに必要

 再開後の学校では、学習の遅れを取り戻すことが最優先となり、授業の進め方も速くなっている。「国が定める最低限の学習内容を消化できない、ということですが、そもそもその量が多すぎる、細かく規定されすぎているという課題がある。そのことを見直す必要があるのではないでしょうか」

 コロナについては未知の部分がまだ多くある。だからこそ「今しかできない学びがたくさんあるのでは」と内田さん。子どもたち自身がコロナに関する情報を集め、対処法などを議論したり、そもそもウイルスとは何かといった基礎知識を調べたり。世界の流行状況を地図に落とし込んだり、感染者の割合を調べたりすることも、地理や数学の学習になる。

 「子どもたちは事実を知り、納得できると、すごく冷静になれる。今求められている人との距離を取ることや、マスクの着用など、大人にすれば『めんどくさい』と思うことでもちゃんと行動できる。そうした学びができる学校は、子どもたちにとって居場所と感じられるでしょうし、先生たちも生き生きといられるのでは」

「全ての子に同じ授業・テスト」から「21世紀型」へ変わるチャンス

 一方、コロナ以前から、学校が居場所でなかった子どもも多い。不登校の子どもは昨年度、過去最多の16万人に上った。内田さんの元には、コロナで家にいることが推奨され、逆に生活のリズムを取り戻したり、「勉強するのに自分の部屋がほしい」と前向きな言動をするようになったりした、との声も届く。コロナで広がったオンライン授業にも可能性を感じるという。「勉強や学ぶことが本来嫌いではない子どもたちが、教員や級友との人間関係の中で傷つく恐れがなくなれば、安心して授業を受けられる」

 厳しい生活指導と詰め込み授業で息苦しさを感じている子どもたちも、学校で傷ついた不登校の子どもたちも「休むことができず、命を絶つことが決してないように」というのが内田さんの強い願いだ。「そのためには疲れたときはまず休む。回復してから再スタートできる社会でなければ」と訴える。

 コロナ禍を経て、教育が変わることに期待する内田さん。「全ての子が同じ内容の授業で、一斉にテストを受けるという20世紀型の教育を21世紀型にシフトするチャンス。国や学校に期待するだけではなく、親も同じ子育て観を持つ人とつながりながら、新しい子育てに取り組んで」と呼び掛ける。

内田良子(うちだ・りょうこ)

 1973年から27年間、都内の病院の小児科で心理室に勤務。同じ年から都内の複数保健所でも相談員を務める。1998年、子ども相談室「モモの部屋」を開き、不登校やひきこもりなどの相談会を開く。近著に「『不登校』『ひきこもり』の子どもが一歩を踏みだすとき」(ジャパンマシニスト社)。

[元記事:東京新聞 TOKYO Web 2020年8月6日

 

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