理不尽な校則に苦しむ子へ 荻上チキさんからメッセージ「おかしなルールは変えられる」

岩岡千景 (2019年12月30日付 東京新聞朝刊)
子育て世代がつながる
 理不尽な校則を巡る動きが目立った今年。「ブラック校則」と題した映画やドラマが公開され、東京都世田谷区は区立中で「下着は白」や男女別髪形などの規定の廃止を決めました。「ブラック校則」の共著書がある評論家の荻上チキさん(38)に、校則の問題について聞きました。
校則の状況などについて話す評論家の荻上チキさん

校則の状況などについて話す評論家の荻上チキさん

あしき教育効果「声を上げるのは痛いヤツ」

-理不尽な校則は、なぜ問題なのでしょうか。

 人々の行動や自由を縛るのに相当する合理性の説明がなく、先生や学校が一方的に生徒に押しつける格好になっているなど校則の現状を巡る問題はいろいろありますが、特に問題なのは「隠されたカリキュラム」になっていること。暗黙のうちに、「年上や先生には逆らってはいけない」「和を乱してはいけない」「理不尽なルールであったとしても、それに従う方が個人の権利を主張するより重要だ」という価値観を子どもたちに伝えている。「社会のおかしなルールは変えられる」という考えを失わせ、「声を上げる人は生意気で痛いヤツ」という感覚を育ててしまう。

 18歳選挙権が始まった時、「主権者教育」が盛んに叫ばれましたが、学校は校則を決める主権を子どもたちに譲っていないし、いざ18歳になって権利を行使しようとしても、子どもたちは社会の理不尽さを変えようという議題設定から締め出され続けている。秩序を自分たちで変えていく力を奪っていることが、あしき教育効果だと思います。

校則に縛られ、ストレス解消できないと…

―校則によるストレスがいじめや不登校につながっているとも聞きます。

 そうですね。イライラした時、伸びをするなどストレスへの対処法にはいろいろある。しかし、校則に縛られ、そのスキルを身に付ける機会を奪われ続けているのが今の子どもたちです。買い食い、漫画、スマホ持ち込み、廊下での立ち話…。禁則が多すぎてストレスを解消できない。対処法のレパートリーが少ないまま成長すると、過剰飲酒や依存などで自分の心身を傷つけてしまう。

 教室で休み時間に友達と騒ぐのは許されても、さまざまな文化に触れられないため、教室は1人でいることが許されず、より声が大きく社交的な人が支配する空間になる。ストレスへの対処下手な人が放置される一方で、うまく対処する仲間にいら立ち、蔑視する気持ちを育ててしまう。そして、「空気読めないヤツ」などと言っていじめのスイッチが入ることもあり得ます。

校則の状況などについて話す評論家の荻上チキさん

校則の状況などについて話す評論家の荻上チキさん

HPでの校則公開、実態調査…各地で見直しも

―改善に向けた動きもありました。

 ホームページでの校則公開は、岐阜県など各地に広がっています。髪の黒染め強要について各地の実態調査も積み重なり、整形医学の検証を基に教科書を学校に置いて帰る「置き勉」禁止を見直す動きも出てきた。ただ、ひどい校則もまだ多く、もっと大きく変わってほしい。

―苦しむ子へ助言を。

 おかしいことには「おかしい」と思っていい。「嫌だな」という感性は正しくて、抑圧に従わないのが第一歩。声を上げられないなら心の中で反発し続け、声を上げた人の足を引っ張らないことはできる。合理性と根拠を問い続けることで、おかしいことは変えられるということを知ってほしいですね。

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