巣ごもり生活の「ビタミンD不足」に注意 骨が軟らかくなる「くる病」の子が10年で10倍超 日光浴と食事で補おう

平井一敏 (2020年5月22日付 東京新聞朝刊)
 骨や歯を強くし、感染症予防にも役立つ「ビタミンD」。特に成長期の子どもには欠かせない栄養素だ。太陽の紫外線(UV)を浴びれば体内でつくることができ、食事で取ることも可能だ。新型コロナウイルス対策で家にこもりがちの生活が続く今、親子でビタミンD不足に陥っている人もいるのではないか。

図解 ビタミンDの補い方

成長期に必須 骨や歯を強くし免疫機能保つ効果

 ビタミンDは腸管で、骨や歯の材料となるカルシウムやリンの吸収を促す。ビタミンDの働きに詳しいクリニックばんびぃに(東京)院長の小児科専門医、時田章史さん(61)は「ウイルスや細菌から体を守る免疫機能を保つ効果もある」と話す。

 成長期にビタミンDが足りないと、骨が軟らかくなる「くる病」の原因に。発症すると、歩き始める1歳すぎからO脚などが見られる。血液中のカルシウム濃度が低下してけいれんを起こすことも。東京大の研究チームが公的医療保険データを分析したところ、くる病で治療を受けた15歳以下の割合は2005年の10万人当たり1.1人から、2014年には12.3人と10年間で10倍以上に増えた。

親子でUV避けすぎ 顔と両手に数分当てればOK

 主な要因として、時田さんは日光浴不足を挙げる。ビタミンDは紫外線B波(UVB)によって、皮膚で必要量の80~90%がつくられる。しかし、特に若い女性はしみなどを恐れ、少しの外出でも日焼け止めを塗るなどUVを避けすぎる傾向がある。さらに、過度のUVは皮膚がんの危険があるとして、1998年に母子健康手帳から日光浴を勧める記述が消えたことを受け、親子そろってビタミンD不足になる例も。

 時田さんによると、赤ちゃんから大人まで、日光浴や食事で1日に補いたいビタミンD量は5~10マイクログラム。夏の晴れた日中なら、顔と両手の甲に数分ほど日光を当てればOKだ。新型コロナ対策で外に出にくい今は、換気の際に開けた窓から顔や手を出すといい。名古屋や横浜など全国11カ所ごとに、日焼けをすることなく、必要なビタミンDをつくれる時間を載せている国立環境研究所のウェブサイトが参考になる。

食事に魚やキノコ類を 母乳だけでは不足しがち

 梅雨や猛暑など外で日光浴がしにくい場合は、ビタミンDを多く含む魚やキノコ類などを食べることも大事だ。子どもの食と栄養に詳しい東洋英和女学院大非常勤講師の上田玲子さん(66)は、離乳食を取り始めるころから、ベニザケやサンマなどを食べさせるよう呼び掛ける。シラス干しは湯通しして塩を抜いてから、干しシイタケはそのまますりおろせば、おかゆに入れたりスープのだしにしたりと幅広く使える。

 離乳まで赤ちゃんを母乳だけで育てている場合は、特に注意が必要だ。多くの栄養素が加えられた育児用ミルクに対し、ビタミンDがあまり含まれていないからだ。時田さんらの研究グループは17年、東京都と静岡県の生後0~6カ月の乳児49人について血液中のビタミンD濃度を測定して発表。母乳だけで育っている28人の75%がビタミンD不足だった。

「一生にわたって大切」でも、とり過ぎには注意

 食べる量も種類も限られる離乳初期やアレルギーによる食事制限などで必要な量を取れない場合は、ドラッグストアなどで買えるビタミンDサプリメントを使うといい。生後1カ月から使える液体サプリメントが便利。日に1~3滴を、乳首や指先に垂らして赤ちゃんに与えるといい。

 ビタミンDの取り過ぎは頭痛や吐き気などを引き起こす。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、1日の摂取上限量を1歳未満で25マイクログラム、18歳以上で100マイクログラムとする。とはいえ、大人もビタミンDが不足すると骨粗しょう症などになりかねない。時田さんは「ビタミンDは一生にわたって大切」と、摂取を意識するよう呼び掛ける。

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