RSウイルス感染症が急拡大…コロナ対策徹底した昨年の反動か 専門家指摘「免疫のない1~2歳に広がった」
1歳で50%、2歳までにほぼ全員が罹患 重い肺炎の原因に
名古屋市北区の男性会社員(35)の長男(1つ)が、RSウイルスに感染したのは5月中旬。最初は38度台の発熱で、小児科では風邪と診断された。しかし、その後、激しくせき込み始め、食欲も落ちた。再び受診して検査を受けたところ、感染が分かった。「妻と2人で看病したが、せきがひどく、治るまで1週間かかった」と話す。
呼吸困難などを伴う乳幼児の細気管支炎、重い肺炎の多くはRSウイルスが原因。感染者のくしゃみやせきなどによる飛沫(ひまつ)感染と、ウイルスが付いた手などを介した接触感染で広がる。発熱やせきなど風邪に似た症状が出て、ほとんどは数日で治まるが、悪化するとたんが詰まり「ゼイゼイ」と呼吸するようになる。
1歳で50%、2歳までにほぼ全員がかかるとされる。症状が重いのは初めて感染した時。特に生後6カ月未満の乳児や早産児、2歳以下で心疾患などがある子は重症化しやすい。生後28日未満の新生児の場合、突然死につながる無呼吸発作を起こすこともある。
昨年は感染報告ほとんどなし 今年3月から全国で患者急増
国立感染症研究所が全国約3000の小児科医療機関に実施した調査によると、今年は3月から過去3年間を上回るペースで全国的に患者が増加。6月7~13日の1週間は感染者数が8240人(1医療機関当たり2.62人)となり、2018年秋のピーク時の7712人(同2.46人)を上回った。13日までの累計感染者数は6万5876人。
一方で、マスク着用や手洗い、保育園の休園など厳格なコロナ感染対策が取られた昨年は、年間を通じて感染者の報告はほとんどなかった。公衆衛生が専門の新潟大大学院(新潟市)特任教授の菖蒲川由郷(しょうぶがわゆうごう)さん(44)は、今年の流行を昨年の反動とみる。「人の流れも増え、免疫を持たない子が多い現在の1~2歳に感染が広がった可能性がある」と話す。加えて、RSウイルス感染症は湿度が高いと流行しやすいという研究も。今年は、九州から東海で梅雨入りが記録的に早かったことも、感染者が急増した要因と考えられるという。
予防策はコロナと同じ 治療薬はなし、呼吸器症状に注意
予防策は、基本的にコロナと同じ。子どもは帰宅時や食事前、くしゃみをした後などの手洗いを徹底したい。おもちゃは小まめに消毒し、流行時は人混みを避けることが大事だ。インフルエンザのように、予防のためのワクチンや感染した際の治療薬はないため、早産児や心疾患があるなどリスクが高い子は、重症化を抑える抗体製剤パリビズマブを事前に注射することもある。
藤田医科大(愛知県豊明市)小児科教授の吉川哲史さん(60)は「最初は、風邪と見分けがつかない」と指摘。「たんが詰まる、ゼイゼイするといった呼吸器症状が出てきたら感染を疑い、早めに受診してほしい」と訴える。