「コロナはかぜと同じ」断言は危うい 感染症看護の専門看護師が解説 対策は「マスク」に尽きる

飯田樹与 (2022年2月15日付 東京新聞朝刊)
 新型コロナウイルス感染は深刻な状況が続いている。確保病床使用率は57.7%(13日現在)でなおも上昇傾向にあり、自宅療養者は約3万3千人(同)に上る。誰もが感染しうる状況の中、感染症看護専門看護師として埼玉県のコロナ対策に関わる坂木晴世・国際医療福祉大学大学院准教授に、感染を防ぐポイントや自宅療養への備えを聞いた。

マスク着用と換気の徹底を訴える坂木晴世准教授=東京都港区の国際医療福祉大学大学院で

軽症が多いが、後遺症など未知の部分も

 ―現在の感染状況をどう見ている。

 ワクチン接種が進み、酸素投与や人工呼吸器が必要な患者よりも、喉が痛い、熱が高いといった軽症患者が圧倒的に多い。そうした症状の人たちを大勢診なければならず、入院よりも外来診療や往診の体制を強化していく必要がある。

 症状だけ見ると確かにかぜとほぼ同じ。ただ、身体の中で何が起こっているのか、後遺症はどうなのか分かっていない部分もある。「かぜと同じだから大丈夫」と断言するのは危うい。

「エアロゾル」が部屋にこもらないように

 ―家庭内感染を防ぐには。

 手洗いや、よく触る場所の消毒もできればしてほしいが、一点集中でやるなら「誰かと対面で話す時はマスクをする」に尽きる。飛沫(ひまつ)を飛ばさず、感染者の口や鼻から出て空気中に浮遊するウイルスを含んだ微粒子「エアロゾル」が部屋の中にこもらないようにしてほしい。食事の間は会話をやめるだけでも、かなり違う。

 寒いだろうが、暖房を使いながら換気もしてほしい。窓を全開にしなくていい。ほんの10センチ、すきま風でかまわないので、部屋の中で空気の流れができるように2カ所開けてほしい。窓がない部屋なら、出入り口にサーキュレーターや扇風機を置いて換気してほしい。

自宅療養に備え、解熱鎮痛剤や非常食を

 ―感染して自宅療養になった時への備えは。

 解熱鎮痛剤は常備薬としてあるといい。レトルトのおかゆなど非常食や、脱水症状に備えて経口補水液を用意しておいてもいい。

 ―家族の中に感染者が出たらどうすればいいか

 同居者にはマスクをせず他人と話すといった、リスクの高い行動を避けてもらうことが大事。それでも感染した場合は、感染者はドアが閉められる部屋の中で過ごしてほしい。

 ワンルームに2人暮らしの場合は宿泊療養施設への入所が望ましい。難しければ互いにマスクをして、窓やドアを開けてしっかり換気し、三密(密閉、密集、密接)を回避するよう少し離れて過ごしてほしい。

ケアが必要な幼児が感染したらどうする

 ―ケアが必要な幼児や高齢者が感染し、自宅で療養せざるを得ない場合はどうすればいいか。

 栄養と水分を取らせ、早く回復する環境を整えるのが大事。感染者とはできるだけ部屋を分け、互いにマスクをした方がいいが、難しい場合はケアする人だけでもマスクをし、距離を取ったり、正面に立たないようにしたりするといい。

 食事は時間をずらすなど一緒に食べるのは控えて。ケアする人が感染した場合は、誰かにケアを代わってもらうのが一番だが、無理であればマスクをしっかりとつけ小まめに手洗いを。

専門看護師とは

 日本看護協会が認定する資格で、5年以上の実務経験があり、看護系大学院で修士課程を修了後、認定審査に合格して得られる。高い看護技術や知識を有し、病院や大学などの教育現場、訪問看護ステーションなどで活動する。がん看護や災害看護など13の専門分野があり、感染症看護専門看護師は全国に93人、埼玉県内には2人いる(14日現在)。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2022年2月15日