日光に当たれない難病「色素性乾皮症」の海陽ちゃん 治療法を求め情報発信する両親の思い「未来を変えたい」 

久下聡美 (2022年10月23日付 東京新聞朝刊)

外出する新貝海陽ちゃん。母親の真夕さんが手作りした防護服で紫外線を遮断する=浜松市で

 浜松市中区の新貝海陽(しんがいうみひ)ちゃん(1)は、生後間もなく「色素性乾皮症(かんぴしょう)」と診断された。紫外線を浴びると皮膚にやけどのような症状が現れて皮膚がんのリスクが高まり、6歳ごろから難聴や転びやすくなるなど身体機能の低下が始まる。現在、治療法はなく30代まで生きるのが難しいとされる難病。父篤司さん(39)と母真夕さん(34)は、学校での講演やYouTubeの「うみひちゃんねる」などで、家族の日常や病気のことを伝え、治療につながる情報を求めている。

異常な日焼け 6歳ごろから身体機能低下

 兄の夕海(ゆうみ)君と室内を駆け回る。「こうしていると元気な男の子。でも、太陽の下で遊ぶことはできません」。篤司さんと真夕さんは、常に紫外線測定器を持ち歩く。自宅の窓には紫外線遮断フィルムを貼り、公園で遊ぶのは、日が落ちた夕方の1時間ほど。日中出かける時は、太陽の光が体に当たらないよう頭の先から足先までを覆う。

 異変を感じたのは、生後2カ月。家族で雪山へ出かけた後、目の周りやほほに激しい日焼け痕が出た。「雪山で照り返しがひどかったからでは」。最初は医療機関でも分からなかった。しかし、外に出ると顔が腫れるほどの異常な日焼けをする。その後、「色素性乾皮症」と診断された。

 色素性乾皮症は国の指定難病で発症は約2万2000人に1人。国内には約600人の患者がいると推定される。6歳ごろから難聴、転倒しやすいなどの症状が出始め、15歳ごろには歩くことが難しくなる。10代の終わりには、飲み込んで食事をするのも困難になるといわれている。生まれたばかりのわが子の未来が、涙でかすんだ。

「20年後、30年後も生きていてほしい」

 間もなく2歳を迎える海陽ちゃんは、散歩も水泳もする。「こんなに元気だから、何とかなるかもしれない」。そう思っていた真夕さんは、成長を実感する一方で、体の機能の低下が始まるとされる6歳が迫る現実に焦りを感じる。「もう、あまり時間がない」

色素性乾皮症を患う海陽ちゃん(中央)の治療の道を探る篤司さん(左)と真夕さん=浜松市で

 篤司さんと真夕さんは、講演活動やYouTubeのほか、インスタグラムツイッターでも一家の生活を公開し、つながりを広げる。「海陽は今、生きている。20年、30年後も生きていてほしい。海陽の未来を変えたい」

色素性乾皮症とは

 紫外線で引き起こされる遺伝子の傷を修復する仕組みに欠損があるため、傷が修復されないまま残ってしまう病気。日光に当たると、通常の約2000倍の確率で皮膚がんが生じるとされる。国内では患者の6割以上が原因不明の神経症状=歩行障害、難聴、誤嚥(ごえん)、嚥下困難=を合併している。日本での発症頻度は諸外国と比べると高い。

コメント

  • 私も, 海陽くんが太陽の下を思いっきり駆け回れる未来が来ることを祈っています. 仮にも創薬化学者なのに, お力になれず申し訳ありません. 先ほど, Pieter Cullis というブリティッシュコ
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