難病・ウルリッヒ病のことを知ってほしい 当事者団体を率いる高校生3人の思い

(2021年11月22日付 東京新聞朝刊)
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「自分の経験を悩む人に伝えたい」という渡部耕平さん(本人提供)

 先天性筋ジストロフィーの1つで指定難病の「ウルリッヒ病」の当事者らでつくる団体「ウルリッヒの会」の代表に今年、患者の1人である東京都内の高校1年生が就任した。「病気で悩む人に『1人じゃないよ』と伝えたい」。副代表と会計もやはり患者の高校生で、そろって活動の先頭に立つ。「どんな病気か、多くの人に知ってほしい」という3人の声が「ニュースあなた発」に届いた。

ウルリッヒ病とは

 生まれた時から、ひじや膝の関節が固くて動かせない、手足首の関節が過剰に柔らかいなどの特徴がある。呼吸のための筋肉が弱くなっていくため、10代で人工呼吸器を要する患者が多い。遺伝子の変異が原因とされ、国内の患者数は約300人。根本的な治療法は確立されていない。

15歳の代表・渡部さんが学校選びを助言

 「資料を読んで親に見学してもらい、車いすで通える3校に絞りました。その結果僕は私立中高一貫校を選びましたが、地元の公立中に進むと友だち関係が途切れないメリットがある」

 「ウルリッヒの会」が患者や家族を対象に10月に開いたオンライン座談会。患者であるわが子の進学について質問した保護者に対し、代表の巣鴨高1年渡部(わたなべ)耕平さん(15)は、自らの経験を例に「学校選びは本人の意志が大事」と強調した。

 渡部さんは10歳でウルリッヒ病と診断された。小学校高学年になると立ち上がることが難しくなり、車いすを使うように。「手助けしてくれる同級生がたくさんいたが、冷たい態度を取る人もいてつらかった」。中高一貫の巣鴨中に合格し、通学のため学校近くに引っ越し。移動は電動車いすを使いトイレや入浴、着替えなどは介助を受ける。

悩む患者に伝えたい 「一人じゃないよ」

 患者と家族、ボランティアらが会を設立したのは2019年3月。現在会員は関東から沖縄まで約40人で、座談会や勉強会を開いたり、国に病気の原因解明を要望したりと幅広い活動を展開している。

 渡部さんは今年7月、「患者だからこそ分かること、できることがある」と考えて手を挙げ、代表に就いた。最近は、大手製薬会社の新薬開発に関するリモート講義を受ける。「代表になって病気や治療法について学ぶ意欲が高まった」

 中古品の買い取り金額が支援金になるクラウドファンディング「キモチと。」を通じ、対面での交流会の再開などに向けた活動資金集めも始めた。「悩む患者さんや保護者の方に、『一人じゃないよ』と伝えられたら」と力を込める。

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玉置陽葵さん(本人提供)

支える同世代 高校生が副代表と会計に

 そんな渡部さんを同世代の仲間が支える。7月から、いずれも患者で高校1年の玉置陽葵(ひより)さん(15)が会の副代表に、特別支援学校高等部2年の松藤穂佳(まつとう・ほのか)さん(17)が会計に就任した。

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松藤穂佳さん(本人提供)

 玉置さんは自宅から最寄り駅まで30分かけて電動車いすで移動し、電車通学する。そんな生活をSNSで発信したところ、患者の母親から学校生活や受験について質問され、アドバイスを送ったこともある。

 松藤さんは、高等部卒業後に就職を目指す。障害者雇用で1日8時間働くのは体力的に難しいが、施設就労では賃金が低く、自立できないと悩む。「同じ悩みを抱える人と、改善に向けて連携したい」と話した。

元記事:東京新聞 TOKYO Web 2021年11月21日

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