子どものスマホ利用でドライアイが増加 目を守るケアと「まばたきエクササイズ」を解説します

海老名徳馬 (2023年1月28日付 東京新聞朝刊)
 目の表面が乾く「ドライアイ」が、大人だけでなく子どもにも広がっている。スマートフォンやタブレットなどの画面を見ながら作業する機会が世代を問わず増す中、目のトラブルを抱える人は増え続けているという。 

まばたきの回数が4分の1に

 ドライアイは目の表面にある涙液層が不安定になる状態で、症状が続くと角膜に傷がつきやすくなる。日本角膜学会理事長で杏林大教授の山田昌和さん(61)によると、国内の患者数は推定2200万人に上る。

 山田さんは「ドライアイになるのは大人だと考えられてきたが、子どもでもとても増えている」と指摘。大きな理由として挙げられるのが、スマートフォンやタブレットなどの画面を見る機会の増加だという。

 角膜は傷つきやすく、まばたきで涙の膜をつくることで外部の刺激から守っている。ところが画面を見ながら作業をすると、通常は1分間で20回ほどのまばたきの回数が、4分の1程度の5回ほどまで減る。

大人は疲れるが子どもは…

 角膜に傷を負うリスクなどについて発信するサイト「現代人の角膜ケア研究室」が昨夏、小学校高学年の子どもとその親500組に聞いた調査では、週に1日以上目の疲れを感じている大人は74.8%。子どもが36.4%だった。調査を監修した同学会評議員で医師の有田玲子さん(53)は「大人だけにあった目の疲れという感覚が、かなり低年齢化している」と説明する。

 調査では、まばたきをせずに何秒目を開けていられるかを測るテストも実施。無理に我慢せず、まぶたが閉じたり閉じようとしてピクピク動いたりするまでの時間が、10秒以下だとドライアイの可能性が高く、大人は26.6%、子どもも23.8%が該当。「子どもは涙に油が多く涙の質が高いが、大人とほぼ同じ割合だった」と驚く。

 角膜の傷は目のかすみや疲れやすさにとどまらず、強い痛みや視覚障害などにつながる可能性も。特に子どもはスマホなどを近い距離で見ることが多いため、焦点を合わせる筋肉に負荷がかかりがち。山田さんは「大人は疲れてしまうが、子どもは頑張って見続けるため、近視が進む可能性もある」と危惧する。

アイケアが大切 温めよう

 目を守るためには、適切なケアを心掛けたい。山田さんは「歯を守るオーラルケアのように、目を守るアイケアも意識してほしい」と呼びかける。画面を見て作業する際には、

  • 1時間に1回は休憩
  • まばたきの回数を意識的に増やす
  • 乾燥を防ぐためエアコンの風が当たらない場所を選ぶ

―などがよい。

 子どもの意識を高めるためには、親が実践するのが効果的だ。有田さんはすぐにできるケアとして、目を温める方法を勧める。涙に含まれる油の層ができやすくなり蒸発を防ぐ。ただ蒸しタオルは乾くと温度が下がるため、ビニール袋に入れて使うなど工夫したい。

目の周りの筋肉を鍛えよう

 「すぐに効果が出て涙の質が高まる」のが、目の周りの筋肉を鍛えるエクササイズ=上の図。まず2秒目を閉じて、軽く2回まばたきをし、次に上まぶたに力を入れて「ギュー」と目を閉じる。眉間にしわができると、まぶたとは違う筋肉を使っているため注意が必要だという。

 次に目を開いて「まぶしい目」をして下のまぶたを動かす。難しいなら目尻と眉毛の間を指で軽く持ち上げて「キツネの目」にしてから目を閉じようとするといい。以上を1時間に1回、1回5セット行うのが最も効果的。「トイレに行く際などに習慣化しては」と勧める。

 市販などの目薬の使用も悪くないが、差し過ぎると涙を洗い流してしまう場合もあるという。有田さんは「子どものうちから習慣化するのはよくない」。あくまで補助的な手段と位置付け「できるだけ自分の涙を生かしてほしい」と話す。