AIが保育所入所を選考 港区が10月に導入 「延べ500時間の手作業」が5分で済む
勤務や家庭の状況を指数化…選考作業は煩雑
港区保育課によると、1年で最も申し込みが集中するのが4月入所の一次申し込みで、本年度は児童約2500人分の申請があり、職員約15人が3日間、延べ約500時間かけて手作業で約80施設へ振り分けた。AIを導入した場合、この作業が約5分で可能になる。
区では、認可保育所などへ入所を希望する場合、保護者の勤務や家庭の状況などを指数化して優先度を決めて選考の基準としている。港区の場合、申請時に希望を20施設まで記載できるほか、「きょうだいで同じ保育所でなければ行かない」などを考慮するため、作業が煩雑になっていた。
通知が早くなり、保護者はすぐ「次」に動ける
採用するのは、富士通(東京)が自治体向けに開発したAIを使った保育所選考システム。同社によると、最適パターンを瞬時に見つけ出すシステムで、既に滋賀県草津市が導入を決めている。昨年11月時点で約30自治体が実証実験を行っている。
港区は、昨年6月から9月まで実証実験を繰り返し、AIの選考結果を職員の手作業と100%一致させることに成功。導入を決め、約1100万円の予算をつけた。区によると、年間400万円の人件費削減が見込め、初期投資も数年で回収できるという。
実際の運用では、AIの選考結果を職員が最終確認する。区の担当者は「内定や待機通知を早く出せることで、保護者がすぐ次の施設の検討に動ける」とメリットを挙げる。
AIにできない「個別の配慮」の余地も必要
都心の保育所不足は深刻で、市民団体の調査によると、昨春、港区は希望する認可保育施設に入れた子どもが4割しかいなかった激戦区。保育に詳しいジャーナリストの小林美希さんは「職員の負担が軽減されることで、保育行政のサービス向上が期待できる」と評価する。
一方で「これまで指数化できない個別に配慮されてきたケースもあったはずで、AI化によって切り捨てられないかは不安。それらを柔軟にすくい取るのが福祉であり、人が判断する余地を残すことも必要ではないか」と指摘する。