保育園と幼稚園の防災力高めたい 横浜で「顔が見える関係づくり」行政が後押し
加藤益丈 (2019年6月21日付 東京新聞朝刊)
保育園と幼稚園に災害への備えを充実させてもらおうと、横浜市神奈川区は住民と「顔が見える関係」を築くのを後押しする取り組みを始めた。散歩などの途中に被災すると、職員だけで対応するには限界がある。園向けの連続講座を横浜市立大と共同で行うほか、実際に保育園と幼稚園1園ずつの関係構築の手助けをする意向。
新設ラッシュの保育園 地域との交流に差
2011年の東日本大震災で、津波に襲われながら園児全員を無事に避難させた宮城県名取市の保育園の所長の講演を区職員が聞き、日頃の備えの大切さを再認識したのがきっかけ。備蓄や避難訓練など自助の取り組みは進む一方、新設ラッシュの保育園は地域との交流の進み具合に差があることから企画した。
まず、保育園と幼稚園向けに特化した防災ガイドを区内全園に配布。A4判6ページで、備蓄や初動対応マニュアルの策定に加え、散歩コースを含め園周辺の危険な場所をまとめた防災マップ作りも求めた。連続講座は、マップの充実や活用に必要な住民との協力関係を築く参考にしてもらおうと開いた。
「お散歩マップ」公開で交流が深まった例も
区役所で14日に開かれた初講座は、青葉区で保育園と地域の交流を成功させた同大の三輪律江准教授が講師を務めた。「保育園と幼稚園の違いを知らない住民もいる」と切り出し、自治会に入り回覧板に各園が作った「お散歩マップ」を公開することで住民から認知され、交流が深まったと紹介した。「各園は散歩などを通じて普段から街と関わっている。あと一歩でつながることができる」と語った。
講座には神奈川区内100余の園のうち46園の57人が参加し、熱心にメモを取った。開園2年目の認可保育園の園長は「地域の方と親しくなりたいと思っていた。日々の活動から交流を深められるとヒントをもらった」と語った。
区こども家庭支援課の担当者は「津波や土砂崩れなど、地域により想定される災害はさまざま。実情に合った対策を取ってもらえれば」と話した。講座は10月24日、来年2月19日にも開く。