水戸市の病院でクラスター発生、医療スタッフの子どもが「登園自粛」要求されていた 市が保育施設に注意
濃厚接触者ではないのに…
「院内の医療スタッフについて、非常に困っていることがある」
水戸済生会総合病院の生沢義輔院長が、水戸市保健所で12日に開かれた感染に関する説明会で、そう切り出した。
生沢院長によると、9日に院内での感染者が発表されて以降、感染者の濃厚接触者ではない医療スタッフが、学童保育や保育所から子どもの利用を断られたり、医療スタッフの配偶者が職場から出勤停止を命じられたりした。
医療スタッフへの中傷も
子どもの受け入れを断られた医療スタッフは、20人ほどいたという。生沢院長は「社会全体で考えてほしい」と痛切な表情で訴えた。
3月下旬に院内感染が起きた茨城県内の別の病院でも、医療スタッフが保育施設から子どもの登園を自粛するよう求められるケースが数件あった。この病院では、医療スタッフが中傷被害を受けることもあった。
全国でも同様なケースが報告されたことから、厚生労働省は4月、都道府県や中核市などに「医療従事者の子どもに対する偏見や差別は断じて許されない。偏見や差別が生じないよう十分配慮すること」を求める通知を出した。
差別や不当な扱いに注意
それでも、医療従事者への不当な扱いは、なくならなかった。
水戸済生会総合病院での事例を受けて、水戸市も今月13日、市内の保育所や幼稚園計113カ所に対して「園児の親族がPCR検査を受けた場合や感染した場合、必ずしも登園自粛が必要になるとは限らない」と記載した文書を出し、注意を促した。
水戸市幼児教育課の鈴木功課長は「新型コロナを恐れる気持ちは理解できるが、受け入れる側は敏感になりすぎず、差別や不当な扱いをなくすようにしてほしい」と語った。
水戸市の通知を受けて、水戸済生会総合病院の医療スタッフの子どもの受け入れ拒否は解消された。病院の担当者は「二度とこのようなことが起こらないようにしてほしい」と話している。
こうした経緯を踏まえ、県は、医療従事者や感染者に対する不当な差別を禁止する規定を盛り込んだ条例案を作成。9月4日に開会する県議会定例会に上程する予定だ。