園バス置き去り なぜずさんな安全管理が見逃された? 国が通知したのに静岡県は監査でチェックせず 川勝知事「手落ちがあった」
過去にも乗せ忘れ、誤乗車が判明
「昨年の監査で問題はなかった」。静岡県福祉長寿局の浦田卓靖局長は事件翌日の6日、会見でこう強調した。園児の登園確認管理システムを整備していたことや、過去に死亡事故がなかったことを理由に挙げた。
だが7日の園の会見で、送迎バスで乗せ忘れや誤乗車が過去にもあったことが判明。これまでの県の監査が機能していなかったことが浮かび上がった。昨年11月に監査に入った際、保護者への出欠確認や乗降時の人数確認など、送迎バスでの置き去りを防ぐチェックはしていなかった。
「年度途中なので」調べなかった
静岡県健康福祉部によると、認定こども園への監査では、主に法律などで定められている人員配置を満たしているかや、不審者対策、防災対策といった危機管理マニュアルの整備状況などを確認する。送迎バスの安全性をチェックするのは主な目的ではないという。
昨年7月、福岡県中間市の「双葉保育園」で5歳の男児がバス内に置き去りにされ、死亡する事件が発生。翌8月、国は
- 出欠状況の保護者への確認と職員間の情報共有
- 登園時や園外活動前後のダブルチェックでの人数確認
- 送迎バスへの運転手以外の職員の同乗と乗降時の人数確認
- 危機管理マニュアルなどの見直し
-を各園に求めるよう自治体に通知した。
だが県は年度途中だったとして、通知で指摘された部分は口頭での注意喚起にとどめ、川崎幼稚園の監査で実施状況は調べなかった。本年度になり、監査の対象にした。
甘いチェックの背景に保育士不足
通知後すぐ監査対象にしなかったことについて、小池美也子福祉指導課長は「既に他の施設の監査をしていたので(昨年度は)残りも同様に監査した」と釈明。「年度途中でもチェックして注意する必要があった」とした。川勝平太知事も「結果的には手落ちがあった」と認めた。
行政のチェック機能をどう高めるか。元帝京大教授で保育研究所(東京)の村山祐一所長は「行政が踏み込んだ調査に後ろ向きなのは、園の人員不足の問題などが判明すると対処が必要になる。対処と予算はセットだからだ」と指摘する。「特に保育所は幼稚園と比べ、待遇が悪く働き手が集まりにくい。子どもを守るためどこまで税金投入が許されるかも含め、社会全体で議論が必要だ」と述べた。(足達優人、中川紘希)
園バス降車「ダブルチェック」のはずが17%は1人 静岡県が調査結果を公表
直近1年のヒヤリ・ハットは43件
調査対象は認定こども園、公私立幼稚園、保育所、特別支援学校。
直近1年間の登降園時の園児の安全に関するヒヤリ・ハット事案は43件報告された。バスの補助員が降車を確認せず車内に園児を残し、運転手がすぐ見つけた事案が3件あった。
運転手と補助員が車内を点検しているのは191施設(82.3%)、運転手のみが34施設(14.7%)、補助員のみが7施設(3%)。点検していない施設はゼロだった。
中間市の事件を受け、学校安全計画と危機管理マニュアルの改定が望ましいとされている。両方の策定義務のない保育所を除く220施設のうち、194施設(88.2%)が計画を、174施設(79.1%)がマニュアルを改定していた。
静岡県は書面調査の結果を踏まえ、27日から各施設の立ち入り調査を始め、指導をする。
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